「作る」という行為を消費者に取り戻す――転換期を迎える「Maker Faire」:ポスト・メイカームーブメント(3)(3/3 ページ)
ここから前後編の2回に分けて、世界中で開催されるようになったMaker(メイカー)系展示イベントについて取り上げる。前編では、Maker系展示イベントの象徴ともいえる「Maker Faire(メイカーフェア)」の歴史や今後について、日本独自の発展を遂げるローカルイベントの現状を交えて紹介する。
日本のMaker Faireは地方へ裾野を広げる
2019年から日本のMaker Faireは地方開催を増やしている。2019年5月に「Maker Faire Kyoto 2019」(京都)、2020年1月に「Sendai Micro Maker Faire 2020」(仙台)、2020年2月には筑波大学や筑波出身のベンチャー企業関係者などによる運営委員会との共催で「Tsukuba Mini Maker Faire 2020」(茨城)が開催された。
いずれのMaker Faireも地元のMakerがユニークな作品を出展し、多くの来場者で会場はにぎわった。Maker Faireがまいた種は都市圏だけでなく、地方にも広がっている様子が各会場からうかがえた。
その1つであるSendai Micro Maker Faire 2020では、「家庭ができてから都内のMaker Faireに気軽に参加できなくなったので、地元開催はうれしい」と話す出展者がいた。また、「Maker Faireの存在は知らなかったが、知人から紹介されて初めて参加した」という声も聞いた。日本最初のMaker Faireから12年が経過し、ライフスタイルが変化した出展者もいれば、Maker Faireもメイカームーブメントも知らない作り手もいる。2019年から始まった3つのMaker Faireは規模の差はあるにせよ、各地域に根付いたイベントとして今後も開催されていくだろう。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響により、2020年5月予定の「Maker Faire Kyoto 2020」が中止を発表。その代わりに1日のみのオンラインイベントを開催するとアナウンスしている。また、本家のMaker Faire BayAreaも開催を見送った。不測の事態に足を引っ張られている状況ではあるが、Maker Faireの文化とビジネスを両立する取り組みはこれからも続くだろう。
同時に、Maker Faireが撒いた種は各地に広がっている。次回は日本各地で開催されているローカルな展示イベントについて紹介したい。(前編終わり/次回に続く)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 全世界で逆風が吹くメイカースペースに必要なもの
「メイカームーブメント」の真っただ中、世界中にメイカースペースが誕生した。だが、この10年、採算がとれずに閉鎖を余儀なくされた施設も少なくない。連載第2回では、メイカースペースの歩みを振り返りつつ、TechShopとファブラボの存在に着目し、“2020年代に生き残るメイカースペースの在り方”を探る。 - 「ひとりメーカー」Bsizeが生き残ったシンプルな理由
2010年代に起きた「メイカームーブメント」を振り返るとともに、2020年代に始まる「ポスト・メイカームーブメント」の鍵となる企業や技術、コミュニティーを紹介する連載。ハードウェアの量産や経営に苦労するスタートアップがいる中、モノを作り続け、成長につなげることができているのはなぜか? 日本のメイカームーブメントの先駆けとして知られ、当時「ひとりメーカー」としてメディアにも大きく取り上げられた、Bsizeの八木啓太氏にお話を伺った。 - 大企業からスタートアップ、芸術家まで駆け込むDMM.make AKIBAのモノづくり哲学
さまざまなモノづくりを支援するDMM.make AKIBAの運営に携わる人たちにスポットを当て、世の中にないものを生み出そうとする現場の最前線を追う。第1回は、機材の運用から試作相談、受託開発までサポートするテックスタッフたちを紹介する。 - 2019年の深センから見た、ハードウェアスタートアップシーンの今
世界中から多くのスタートアップ企業が集まる中国・深セン。「アジアのシリコンバレー」とも称されるこの地に拠点を置くスタートアップと、彼らを支援するベンチャーキャピタル(VC)、そして消費者視点で見た深センの街並みを取材した。 - 国内企業とスタートアップのマッチングを加速、日本版「HAX」が目指すもの
住友商事とSCSKは、中国と米国を拠点とするアクセラレーションプログラム「HAX(ハックス)」を運営するSOSV Investmentsと提携し、日本国内のハードウェアスタートアップを対象としたアクセラレーションプログラム「HAX Tokyo(ハックス トウキョウ)」に参加するスタートアップを2019年8月31日まで募集中だ。 - ファブラボ渋谷はこうして生まれた――日本に根付くプラグイン型ファブラボとは
日本で3番目となる「ファブラボ渋谷」の立ち上げを経験し、現在「ファブラボ神田錦町」の運営を行っている立場から、日本におけるファブラボの在り方、未来の理想形(これからのモノづくり)について、「これまでの歩み」「現在」を踏まえつつ、その方向性を考察する。今回はファブラボ神田錦町の前身であるファブラボ渋谷の生い立ちとこれまでの歩みを取り上げる。