国内企業とスタートアップのマッチングを加速、日本版「HAX」が目指すもの:ベンチャーニュース
住友商事とSCSKは、中国と米国を拠点とするアクセラレーションプログラム「HAX(ハックス)」を運営するSOSV Investmentsと提携し、日本国内のハードウェアスタートアップを対象としたアクセラレーションプログラム「HAX Tokyo(ハックス トウキョウ)」に参加するスタートアップを2019年8月31日まで募集中だ。
世界最大級のハードウェアアクセラレーションプログラムが日本上陸!
住友商事とSCSKは、中国と米国を拠点とするアクセラレーションプログラム「HAX(ハックス)」を運営するSOSV Investments(以下、SOSV)と提携し、日本国内のハードウェアスタートアップを対象としたアクセラレーションプログラム「HAX Tokyo(ハックス トウキョウ)」に参加するスタートアップを2019年8月31日まで募集中だ。
審査を経て同年9月に採択企業を決定。11月から翌年(2020年)1月までアクセラレーションプログラムを提供し、2月に成果発表の場としてDemo Dayを開催する。
HAXは、2012年から現在に至るまで200社以上のハードウェアスタートアップを採択。1社当たり約25万ドル(約2700万円)を投資し、アクセラレーションプログラムを提供してきた。
通常、HAXでは年間9本のアクセラレーションプログラムを運用し、4000社の応募の中から150〜200社を採択している。プログラムは2部構成となり、深センで4〜8カ月間をかけて試作から量産化設計までを行う“Stage1”と、サンフランシスコで資金調達や市場開拓を行う“Stage2”で構成される。
東京でのプログラムは“Stage0”として位置付けられ、シードステージのスタートアップを対象にコンセプトのブラッシュアップやビジネスモデル策定を支援。深センでの“Stage1”に採択され得るレベルにスタートアップを引き上げることを目的とする。
プログラムではビジネスモデルの検討や規制調査、顧客ヒアリングによるニーズ理解など、約30項目のマイルストーンを設定し、ビジネスモデルの精度を上げる。プログラムの後半では、深センにあるHAXの拠点で2週間の強化合宿を行う予定だ。深センの拠点では本格的な工作機械と開発環境が自由に利用でき、プロトタイプの完成度を上げることを目指す。最終的には、2020年2月に予定するDemo Dayでビジネスアイデアと試作品を披露する計画だ。
プログラム期間中は、住友商事が運営するオープンイノベーション施設「MIRAI LAB PALETTE(ミライラボ パレット)」をオフィスとして提供する他、ハードウェアスタートアップに精通したエキスパートをメンター陣に招く。
深センからもSOSV内のHAXチームが定期的に日本を訪れ、採択企業とのメンタリングを行う。これまで200社を超えるスタートアップを支援したHAXの経験とノウハウを基にしたサポートに加え、日本独自の支援プログラムが受けられるのが特徴だ。
企業とスタートアップを早期にマッチ
HAX Tokyoを担当する住友商事 新事業投資部 グローバルCVC チーム長の余語徹郎氏は「HAX Tokyoでは、プログラム期間の中で積極的に業界別のミートアップイベントなどを行い、国内企業とスタートアップとのマッチングを加速させたい」として、HAX Tokyo独自のスタートアップコミュニティーを醸成したい考えを示した。
この考えに至った背景には、HAXの卒業生で中国のロボットスタートアップであるYouibot(ユーアイボット)と、フランスの大手タイヤメーカーであるミシュランとの事例が関係している。
Youibotは、デリバリー用のロボットを開発するスタートアップで、2017年に設立、同年にHAXに参加した。屋内外で利用できるナビゲーションシステムを備えた自律型検査モバイルロボットを開発していた同社は、期間中にHAXを通じてミシュランの紹介を受け、大型車両用タイヤの検査ロボットを開発。自律型検査ロボットの技術をタイヤ検査ロボットに応用したことで、通常数年を要する開発期間が数カ月に短縮できたという。このロボットがミシュランで高い評価を受けたことがきっかけとなり、HAX卒業後にはシリーズAの資金調達に成功するなど事業拡大につながった。
HAX Tokyoでもスタートアップの事業支援に加えて、日本企業のオープンイノベーションを後押ししたい考えで、住友商事やSCSKが擁する顧客基盤やビジネス基盤とのマッチングを図っていく考えだ。
余語氏は「HAX Tokyoではクローズドにすることなく、オープンに企業との接点を設けたい」とし、住友商事やSCSKの顧客に限らず、スタートアップとの協業に関心を持つ国内企業を対象に、「マッチングの機会を定期的にイベント形式で開催する予定だ」(余語氏)と語った。なお、スタートアップからの応募は、HAX TokyoのWebサイトで2019年8月31日まで受け付けている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- “ハードウェアに関する悩み”に直面するスタートアップ企業をソニーが支援
スタートアップ創出支援プログラム「Sony Startup Acceleration Program(SSAP)」を展開するソニーは「Sony Open Innovation Day 2019」の中で、多くのスタートアップ企業が直面するプロトタイピングの障壁を下げ、商品化を支援するサービス「StartDash Prototyping」について紹介した。 - 紙切れ1枚からの起業、ソニーがスタートアップ創出ノウハウを外部提供へ
ソニーは、2014年から取り組んできた社内スタートアップの創出支援制度で得たノウハウを外部提供し、スタートアップ支援に本格的に乗り出すことを発表した。 - 中小製造業とスタートアップは最強タッグ!? AIやIoTの素早い活用が可能に
関東経済産業局は、関東圏の中小製造業とスタートアップによるマッチング事業プロジェクトの成果発表イベントを実施。2組のマッチング事例発表の他、中小製造業3社とスタートアップ3社によるパネルディスカッションも開催され、連携のメリットなどが語られた。 - “脱下請け”で世界に勝つ中小製造業へ、浜野製作所とO2が資本業務提携
人手不足などによる中小製造業の事業承継問題が深刻化する中、中小製造業をネットワーク化する新たな取り組みが加速している。中小製造業である浜野製作所と、製造業の運営および支援事業を展開するO2は資本業務提携を行い、中小製造業の人材育成およびネットワーク構築に取り組むことを発表した。 - パナソニックが溶接現場の困りごと解決へ、浜松のスタートアップと協業
パナソニックは、自律型ロボットシステムソフトウェアを手掛けるスタートアップ企業のリンクウィズとの間で、溶接をはじめとする熱加工現場におけるプロセス改善に向けたソリューション開発に関する共同事業開発契約を締結したと発表した。 - 個性豊かなシリコンバレーのスタートアップ、モビリティ向け技術をアピール
米国大使館は、「CEATEC JAPAN 2018」(2018年10月16〜19日、幕張メッセ)のカンファレンスで、「米国テクノロジー最前線- Society5.0に向けたMobilityの可能性」と題するキーノートセッションを主催した。