高分解能の6軸力覚センサーでロボットの用途拡大へ、鋳物設備メーカーの挑戦:ロボデックス
新東工業は「第4回ロボデックス」において、レプトリノとの技術提携により展開するロボット向け「6軸力覚センサー」を紹介。高精度の検出能力によりさまざまなワークの把持認識を可能とし、ロボットの用途拡大への貢献を訴えた。
新東工業は「第4回ロボデックス」(2020年2月12〜14日、東京ビッグサイト)において、レプトリノとの技術提携により展開する産業用ロボット向け6軸力覚センサー「ZYXer(ジグサー)」を紹介。高精度の検出能力によりさまざまなワークの把持認識を可能とし、ロボットの用途拡大への貢献を訴えた。
高分解能を生かしロボットの利用用途を拡大
新東工業は鋳造設備メーカーとして、各種鋳造設備や表面処理装置などを展開してきたが2019年2月に新規事業としてロボット用力覚センサー事業への参入を発表。大学や研究機関向けにさまざまな6軸力覚センサーを提供してきた実績を持つレプトリノと技術提携し、2019年10月から産業用ロボット向けで製品販売を開始している。
6軸力覚センサーは、XYZの3軸と、軸回りの回転の力を検出するが、新東工業の製品では、高い分解能を持ち高精度のセンシングができるという点が特徴となる。例えば、それぞれの軸で500Nの検出を行う標準モデルでは、分解能は4000分の1となり、約10g単位での認識が可能である。高精度のセンシングによりロボットに複雑な動作をさせたり、動作速度を向上させたりすることが可能となる。
同プロジェクトを担当する新東工業 新規事業PJ推進 Fプロジェクト統括責任者の田名網克周氏は「労働人口が減少するのが見えている中でロボットの活躍の場は今後さらに増える。その中でロボットを使いやすくする技術が求められている。高精度の力覚センサーを使うことで、ロボットの高速化、高精度化などが可能となる。加えて、誤動作防止やトレーサビリティー確保などにも活用できる」とその価値について語っている。
会場では、重さが異なる9つのワークを1つずつ持ち、6軸力覚センサーの高精度認識を生かし、重さの順番に並べて設置するというデモンストレーションを行った。ワークは310g〜530gでそれぞれ20〜30gの重さの差が設けられているが、これらの差を間違いなく認識し、正しく配置を行っていた。
田名網氏は「2019年10月から展開を開始しているが反応は非常に良い。組み立て製造やピックアップなどでも従来以上に精度を要求される環境などで既に導入が進んでいる。嵌合や面合わせ、ネジ締めなどの用途で使用されるケースが多いが、今後はさまざまな方向性での提案を進めながらアプリケーションの開発を進めていきたい」と語っている。
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