生産計画立案の「なるべく」や「できるだけ」をAIで自動化、ニチレイが日立と協創:製造ITニュース(2/2 ページ)
ニチレイフーズと日立製作所は、ニチレイフーズの国内工場向けに、日立製作所のAI技術を活用した生産計画と要員計画の自動立案システムを開発したと発表。ニチレイフーズのモデル工場となる4工場で検証を進め、2020年1月から順次本格運用を開始している。今後は2020年度内をめどにニチレイフーズの11の国内工場全てに導入する方針だ。
生産商品切り替え時の型替え時間を半減
今回、ニチレイフーズが生産計画と要員計画のシステム化に向けて採用したのが、日立の「Lumada」ソリューションである「Hitachi AI Technology/計画最適化サービス(以下、計画最適化サービス)」である。2017年に発表した後、新日鉄住金(現在の日本製鉄)をはじめ製造業を中心に採用されており、ニチレイフーズでは2018年8月から効果検証をスタートしている。
計画最適化サービスのコア技術であるMLCP(Machine Learning Constraint Programming)は、職人の機転を学習し柔軟な計画を立案する機械学習ベースの「制約インタプリタ」、さまざまな条件と課題に対応した計画を立案する制約プログラミングと評価指標に合わせてさらに高品質な計画を立案する最適化エンジンから成る「数理最適化エンジン」で構成されている。
“サービス”とある通り、パッケージ製品ではなく、明文化されていない制約条件を抽出するのに必要な顧客の「業務理解」や、過去データの分析による熟練作業者自身も意識していない計画パターンの抽出に役立つ「データ理解」に基づいて、顧客に最適なサービス内容をデザインする。日立 産業製造ソリューション本部 産業ITソリューション部 担当部長の柳田貴志氏は「ニチレイフーズの国内11工場に導入できるMLCPのコアロジックを開発するために、特徴の異なる4つのモデル工場を選出した上でそれらの共通部分を増やす取り組みを行った」と語る。例えば、制約条件の考え方は複数工場でバラバラだったが、これらを整理して共通のマスタや制約条件に集約していったという。
また、計画最適化サービスでは機械学習の基になる過去データが重要だが、これについては2018年8月からの効果検証と合わせて1年間蓄積したものを用いた。そして、過去データとMLCPを用いたシミュレーション結果の比較では、生産商品切り替え時の型替え時間で48.3%削減、販売見込みに追従した適正在庫乖離率で27.5%削減という効果を確認した。要員計画については、モデル工場の全てで従業員が希望する通りに休暇を取得できる計画を立案できた。
長期視点での生産計画の立案が可能に
現在は、モデル工場となった森工場(北海道森町)、山形工場(山形県天童市)、船橋工場(千葉県船橋市)、キューレイ(福岡県宗像市)の4工場でシミュレーションによる効果検証を終えている。4工場のうち1工場で実運用が始まっており、残りの3工場も順次切り替えを進めていく予定だ。
安居氏は「これまでの生産計画の立案は、熟練作業者の1カ月の業務時間で最大3時間かかっていた。極めて手間のかかる作業であり、1〜2カ月程度の期間に対応する生産計画を立てることしかできていなかった。日立との協創で開発した生産計画システムを使えば、従来はやりたくてもやれなかった1年先や2〜3年先といった、長期視点での生産計画の立案が可能になる」と強調する。
要員計画システムについては、作業員の働き方改革にもつながると想定している。従来は、要員計画を立案しやすくするために1日8時間労働を前提に雇用したりしていたが、計画の自動立案によって1日4時間労働など柔軟な働き方を選んでもらえるようになる。「工場だけではなく、当社全体にとってさまざまな波及効果を期待できるのではないか」(同氏)としている。
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