自動化進む食料品製造業、労働災害は製造業全体の約3割を占める:工場安全(1/2 ページ)
総菜製造にかかわる展示会「SOUZAI JAPAN」(2018年9月26日〜28日、東京ビッグサイト)のセミナーで「食料品製造業の労働安全対策」と題して厚生労働省 労働基準局 安全衛生部 安全課の松下高志氏が講演した。
総菜製造にかかわる展示会「SOUZAI JAPAN」(2018年9月26日〜28日、東京ビッグサイト)のセミナーで「食料品製造業の労働安全対策」と題して厚生労働省 労働基準局 安全衛生部 安全課の松下高志氏が講演した。
食料品製造業における労働災害は、製造業全体の労働災害の約3割を占め、最も多くなっている。2017年の休業4日以上の死傷災害は製造業全体が2万6674人で、その中で食料品製造業7963人を占めた。また、食品加工用機械による災害も多発しており、これらの現状と対策を紹介した。
製造業における労働災害は増加傾向
日本における全産業の労働災害発生の状況をみると、死亡者数は減少傾向にあったが2017年は3年ぶりに増加した。このうち食料品製造業は、休業4日以上の死傷者数は年間8000人前後で推移している。さらに、食料品製造業での食料加工用機械が原因となる労働災害(休業4日以上の死傷者数)に絞ると、年間1100人前後で、減少傾向だとはいえない状況だ。
2017年の食料品製造業における労働災害の起因物としては、「仮設物・建築物・構築物(階段、床などで滑ったり、転んだりによりケガなどをした)」が29%で最多。次に「食料品加工機械など一般動力機械」が21%、「人力機械工具」が11%、「用具(包丁など)」が9%と続く。
事故の形としては、「転倒」が30%、「挟まれと巻き込まれ」が21%、「切れとこすれ」が11%、「墜落と転落」が9%の順となっている。
労働災害で生まれる企業の4つの責任
労働災害に関しては企業に4つの責任が生じる。それは安全衛生法上および刑法上の責任である「刑事責任」および、被災者が損害を負うために、法律上に決められた安全配慮義務に基づく「民事上の責任」であり、必要な配慮を怠って労働災害を引き起こした場合には、民事上の責任として損害賠償責任が発生することもある。さらに「行政上の責任」「社会的責任」(信用やイメージの低下)が加わり、これら4つの責任を認識して、企業は労働稼働を進める必要がある。
労働災害は「不安定な状態と、不安定な行動が重なると事故が起こりやすい」といわれている。この両方が重なった場合が92.7%に上る。逆にこれらの要素が両方ともなく、いわば「完全に偶発的な事故」は全体の1.1%にすぎないという調査結果が出ている。
「不安定な状態」というのは「設備に不備があった」「通路に物が置かれていた」「暗かった」「安全装置がない」「安全カバーが外れていた」「作業場所が乱雑」などのモノによってもたらされるものなど、環境上の問題である。これに対し「不安定な行動」は「ルール無視」「手抜き」「作業手順を守らない」「無理な姿勢で作業をした」「安全防護外して作業した」「防護具を使用しなかった」などの人によってもたらされるものだ。
これらが重なると、災害につながる。こうした状況に対し、松下氏は「災害の発生時に責任者が『作業者がミスをした』と原因が作業者にあるように言われるケースがあるが、ミスが起きても災害につながらないような対策を講じておくことが、会社の義務でもある。先ほどの2つの要因が重ならないようにさまざまな取り組みをするのが企業としての責務である」と要望した。
4S、KYT、指さし故障の3つのツール
危険の発見、把握、解決の方法については、ハードウェアの対策(機械、器具、設備の改善)ソフトウェアの対策(作業の標準化、教育、訓練、パトロール)、ヒューマンの対策(作業者への意識付けなどが重要だと語る。その手法としては、4S(整理、整頓、清掃、清潔)、KYT(危険予知トレーニング)、指さし呼称の3つを組み合わせて取り組むことが、地道ながら重要だとし「業務プロセスに組み込み、仕事と一体的に行えるようにどうするかを考えるのが重要だ」(松下氏)としている。
このうち、ヒューマンエラーの原因については「人間能力の限界」「錯誤(スリップ、思い込みや考え違い)」「失念(うっかり、ぼんやり、一時的な物忘れ)」「知識・技量不足」などがある。これに加えて人間には「めんどう」「たぶん大丈夫」等の理由で、わざと危険な行動を犯す(違反)不安定な行動を引き起こすこともあることから、前もっての対応策が大切である。
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