シェア1位追求と顧客ニーズ追従の2面作戦を徹底、パナソニックの産業用部品事業:製造マネジメントニュース(2/2 ページ)
パナソニックは2019年11月22日、各事業の状況を紹介する「Panasonic IR Day 2019」を開催。本稿ではその中から、パナソニック インダストリアルソリューションズ社(IS社)の社長である坂本真治氏の説明内容を紹介する。
シェア1位製品を拡大するデバイス事業
デバイス事業の具体的な取り組みとしては、基本戦略として「業界トップシェア製品の構成比を高める」を掲げる。「デバイス事業の各製品は基本的には、装置産業であり集中生産して効率的な販売網で売るというビジネスモデルである。グローバルで戦う中で、シェア1位か2位にならないと販売数も利益も担保できない。好況時はなんとかなっても、リセッション時には負ける。シェア1位に特化したことで、稼働が落ちている時でも2桁近い利益を出せる体制となっている。好況時は2桁以上の利益が出せる」と坂本氏は語る。
また、高シェアを実現するために、差異化の源泉となる材料やプロセス技術の強化を推進。長期的視点での研究開発の継続投資を行う他、新たな開発手法の開発なども進める。特にマテルアルズインフォマティクスやAIの活用を強化するという(※)。
(※)関連記事:全固体電池はマテリアルズインフォマティクスで、変わるパナソニックの材料研究
シェア1位を獲得している製品の例としては、車載インダクターやEV(電気自動車)向けのフィルムコンデンサー、MEGTRONなどの回路基板材料などを挙げる。これらの製品群はCAGR(年平均成長率)20%以上を予測しているが「業界全体が伸びれば、業界並みには成長できる。その中で存在感を高めることでさらに高い伸長率とすることができる」と坂本氏は語っている。
顧客ニーズに徹底対応するシステム事業
シェアを狙うデバイス事業に対し、システム事業は「シェアは関係なく顧客ニーズに対応することを徹底する」(坂本氏)。強いデバイスを核としたモジュール化などを基盤に、顧客密着で固有のソリューションを提供することを目指す。顧客密着を推進するために、欧州では現地マネジメントで欧州自動車メーカーとの連携強化を進める他、中国ではFA分野で運営組織を新たに設立。工場の省人化などに積極的に取り組む中国の変化のスピードに対応する体制を作ったという。
さらにモジュールやパッケージ提案を進めるためにはパナソニックグループだけでは難しい場合もあるが、社内外の協業を積極的に推進し、顧客に最適な価値提供を進めていく。「モジュール化というと何でもできるような話にもなるが、基本的には自社で強いデバイスを中核に持っているということを条件としている。ただ、その中で足りないものについては外部の力も活用する」と坂本氏は考えを述べている。
モジュール製品として成功している例としては、車載電源モジュールやバックアップ電源モジュール、モーションコントロールなどを挙げる。システム事業の製品は基本的には顧客とのパートナーシップで作り上げるものとなっているため先の見通しが立つ。「2021年度までの目標の売り系売上高900億円はほぼ達成できている。また2024年度までの目標の3000億円もほぼ手の内にある」と坂本氏は自信を見せている。
坂本氏は「デバイス事業は高シェア製品に集中することで2桁を超える利益を生み出せる事業とする。システム事業の利益率はそれほど出せない。2桁弱くらいの利益率が目標となる」と見通しを述べる。さらに成長のためにはM&Aなどを通じた非連続な成長なども求められるが「この4年間さまざまな検討を進めてきたが、この分野は大型のM&Aを行っても大きな成果が出せる事業ではない。ミッシングパーツを探して埋めていくのが重要だ。ジャイロ分野やRFID分野、ソフトウェア知見などについては投資やM&Aも小さい規模で行っている」(坂本氏)。
今後に向けては「独自技術を継続的に磨くこと、グローバルトップランナーに選ばれ続けることを徹底する。デバイスを核に新たなお役立ちを作っていきたい」と坂本氏は語っている。
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