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EV大反転、敵はとり得る3つの方針の中から4番目を選んでくる和田憲一郎の電動化新時代!(26)(1/3 ページ)

フランスや英国政府による2040年までにガソリン車・ディーゼル車廃止の発表に端を発したEV大反転の話題は、政府と既存の大手自動車メーカーの動向に話題が集中している。しかし、これまで想定していなかったプレイヤーが参加するなど、もっと別のところからも動きが出てくるのではないだろうか。まさに異業種格闘技の様相を示してきている。

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 「敵はとり得る3つの方針の中から4番目を選んでくる!」

 こう言ったのは、19世紀を代表するドイツが生んだ戦略家、ヘルムート・カール・ベルンハルト・フォン・モルトケである。「こうなるだろう、きっとこう出てくるだろう……それならば負けることはない」と思っていると、思わぬ手を打たれたり、全く違うところから伏兵が現れたりして負け戦となってしまう。

 なぜこのような話をするかと言われれば、2017年7月のフランス、英国政府による2040年までにガソリン車・ディーゼル車廃止の発表に端を発したEV(電気自動車)大反転の話題が、あまりにも政府と既存の大手自動車メーカー動向に話題が集中していると思ったからである。

 今回のEV大反転は、これまでの政府の動きや大手自動車メーカーの戦略も重要であることは間違いないが、これまで想定していなかったプレイヤーが参加するなど、もっと別のところからも動きが出てくるのではないだろうか。まさに異業種格闘技の様相を示してきている。今回は、政府や大手自動車メーカーの動き以外に、今後、日系自動車メーカーを脅かすことなると思われる4つの要因について述べてみたい。

現在想定されているEV大反転の要因

 既に明らかになっている動向を振り返る。まず、フランス政府と英国政府が2040年までにガソリンエンジン車とディーゼルエンジン車を廃止すると宣言したことにより、欧州の自動車メーカーは一気にEVへと舵を切った。先般のフランクフルトモーターショーでは、Volkswagen(VW)が2025年にEV50車種、世界で300万台販売に広げる目標を発表している。

 次に、中国政府はNEV(New Electrical Vehicle)規制を2019年から実施することを公表した。これまで2018年に前倒しで実施する予定だったが、自動車メーカーからの要望を受け入れて実施を1年遅らせた。しかし、EVやPHEV(プラグインハイブリッド車)に代表される新エネ車の導入比率を10%とする目標は当初予定と変わらず、未達の場合ペナルティもあることから、各自動車メーカーにとっては厳しい規制となる。

 中国政府はフランスや英国と同様に、ガソリン車とディーゼル車の禁止を検討している。BYD 董事長の王伝福氏は、2030年には実施されるのではないかと見ている。先般発表された「自動車産業中長期発展計画」で、既に2025年に新エネ車700万台の目標も掲げており、いきなり2030年は厳しいように筆者は思う。2035〜2040年の間が妥当ではないだろうか。いずれにしても2017年末までには明らかになるだろう。そしてこれらの動きは、各国の規制をますます加速させていく。


図1:東京モーターショー2017で公開された日産自動車のコンセプトカー「IMx」(クリックして拡大)

日系自動車メーカーを脅かす4つの要因

 政府による規制や、自動車メーカーの積極的なEV推進策とはもっと別なところから、EV大反転への動きが出てくると思われる。以下4つを挙げたい。

1.配車サービス会社による商品企画

 日本ではまだ規制により実施されていないが、Uber(ウーバー)などの配車サービス会社のビジネスが著しく拡大している。これまではユーザーが保有しているクルマを使用する例が多かったが、中国などクルマの所有者が少ない地域では、大手のサービス会社「滴滴出行」などが会社保有の車両をドライバーに貸与して運営している。

 筆者の経験でも、配車サービスを依頼するとセダンであればBYD「秦」、ワゴン車であれば○○汽車のワゴンというように、いつも同じ車両が来る。配車サービス会社がかなりの台数の車両をオーダーしていることが伺える。

 これが次第に加速し、ある自動車メーカーから10万台、20万台も購入するとなると、既存の車種を選定するのではなく、配車サービス会社自身が、カスタマー満足度を高められる商品企画を行い、自動車メーカーにその仕様で生産するよう求めるのではないだろうか。

 つまり、これまで自動車メーカーが独自のデザインで差別化し、味付けを変えてきた思想とは真逆な商品企画になる。結果として、これまでにないユニークなクルマが生まれてくるだろう。

 こうした事例で目標となるであろう商品力のレーダーチャートを示す。目標商品力のレーダーチャートは、新しい車両を商品企画する際、どのような機能に重点を置いて開発するのか、それを一目で分かるようにグラフ化した。これによってクルマとして要求する機能の優先順位を明らかにし、それを基に具体的な開発目標値に落としていくことになる。

 今回は分かりやすいように、従来の一般的な目標値を標準値8.0として、配車サービスによる商品企画を筆者が想定して記載した。配車サービス会社の特徴を考えると、1充電あたりの走行距離や耐久性、乗降性、収納性の優先度が高くなると推察される。

 逆にスタイリングや、車両独自の加速性、操縦安定性など味付けの部分はウェイトが低くなるのではないだろうか。このような目標商品力に基づいて開発を進めると、従来とは全く異なるEVが出現する。


図2 配車サービスによる商品企画例のレーダーチャート(クリックして拡大) 出典:日本電動化研究所

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