EV大反転、敵はとり得る3つの方針の中から4番目を選んでくる:和田憲一郎の電動化新時代!(26)(2/3 ページ)
フランスや英国政府による2040年までにガソリン車・ディーゼル車廃止の発表に端を発したEV大反転の話題は、政府と既存の大手自動車メーカーの動向に話題が集中している。しかし、これまで想定していなかったプレイヤーが参加するなど、もっと別のところからも動きが出てくるのではないだろうか。まさに異業種格闘技の様相を示してきている。
2.電機&ITメーカーによる商品企画
量産タイプのEVやPHEVを開発することはちまたで言われるほど容易ではない。筆者から見ると、量産型EV・PHEVを開発するには2つの方法がある。
1つは、言うまでもなく大手自動車メーカーによる本格的開発である。商品企画やデザイン、設計やCAE、試作、量産準備、製造から品質管理、販売まで一連の業務を全て社内で行う。しかし、このような開発手法を踏襲しようにも、それまでEVやPHEVを量産した経験のない自動車メーカーは、初期の段階で相当苦労する。
一方、自ら経験がなくても、きちんとした構想力と事業計画力、それに豊富な資金力があれば量産可能である。日本ではあまり例はないが、欧州や中国にはデザインや設計、CAE、試作などそれぞれを専門とする会社がある。必要な業務を外部専門会社に委託することにより、自社には機能の一部しかなくても、自動車を開発し、生産、販売することが可能である。従来の自動車会社に委託生産すれば、ファブレスとして成立する。
例えば、中国には現在EVメーカーが約250社あるといわれているが、多くはこうした外部委託により成り立っている。先日は掃除機メーカーのダイソンが、2020年までにEVを市場投入すると公表したが、それ以外にも虎視眈々(たんたん)と狙っている企業がいるだろう。
このように電機&ITメーカーがEV市場に参入するのであれば、その商品力は従来とは異なるアプローチをとる。ユーザーの利便性や娯楽性、自動アップデートなど、ユーザーの手を煩わせない独自の手法を搭載し、参入を図ってくると推察される。つまりパワートレインなどの要素は開発専門会社に委託し、自分たちが得意とする新機能を搭載して市場に勝負してくることが予想される。
ダイソンの場合、腰を落ち着けて開発してくるようであるが、いずれにしても、これら新興企業が新技術で参入を試みるため、従来の自動車業界にとって脅威となることは間違いない。
3.機能最低限EVの商品企画
もう1つ忘れてならないことは、市場には地域差があるということである。日本であれば消費者の欲求が高く、商品力は100点満点中95点レベルでなければ販売出来ないかもしれない。
しかし、国によってはそれほど要求が高くなく、例えば衝突安全性1つとっても、日本とはかなり条件が異なるところがある。車両価格を可能な限り低く抑えて、最低限の商品安全性を守りながら、量産EVもしくはPHEVを打ち出してくる自動車メーカーもいるだろう。
こうした新規参入で想定されるのが、二輪メーカーや、例えばタイの「トゥクトゥク」などの三輪タクシーの製造メーカーである。くしくも、タイエネルギー省は2017年10月4日、2022年までにEVに切り替える「eトゥクトゥク」計画を発表した。これらの動きも廉価版EVの開発に拍車を掛けると思われる。
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