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OPC UAはなぜ“通信の意図”を「伝える」ことができるのかOPC UA最新技術解説(4)(2/2 ページ)

スマート工場化や産業用IoTなどの流れの中で大きな注目を集めるようになった通信規格が「OPC UA」です。本連載では「OPC UA」の最新技術動向についてお伝えします。第4回である今回は「つなげる」「安全に」「伝える」という3つのポイントの内、「伝える」を取り上げます。

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コンパニオン情報モデルへの期待

 これまでの連載で、OPC UAの「つなげる」「安全に」「伝える」の機能を紹介しました。これらを整理するための機能モデルを次に紹介しましょう。

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図3  OPC UAの機能モデルとコラボレーション(クリックで拡大)出典:日本OPC協議会

 図3の下層部では、通信モデルとしてクライアントサーバ(Client/Server)型とパブリッシュサブスクライブ(Publish/Subscribe)型があり、認知されているトランスポートプロトコルやデータ表現形式の組み合わせ(プロトコルバインディング)をそれぞれの通信モデルで隠蔽(いんぺい)して、動作環境に応じて選択できることを表しています。

 左右の通信モデルが囲っているのはメタモデルであり、それを利用した基礎的な情報モデルまでをOPC UA標準仕様として規定しています。基礎的なモデルはデータアクセスやアラームなどの業種に依存しない基本機能や、デバイスという最も抽象度の高いレベルでのモデルも含みます。これらの機能の中心を担うものとして、セキュリティ機能が組み込まれています。

 このような情報連携基盤の上に、それぞれの業界分野に特化して情報を「活用する」ための仕組みを用意しています。これが図3の「Companion Information Models」となります。各業界や産業分野で使用されている標準モデルを、それぞれの分野の専門家と協力してOPC UA情報モデルとして資産化していきます。こうしたコラボレーション活動が活発に行われているのです。また、利用者独自の価値を生み出すためのモデル拡張なども行われています。

コンパニオン情報モデルに向けた流れ

 コンパニオン情報モデルを設計するコラボレーション活動に関する最近の話題として、毎年4月に開催される世界最大の産業見本市であるハノーバーメッセ内で2019年に初めて実施された「1st World Interoperability Conference」を紹介します。

 「1st World Interoperability Conference」はOPC Foundationおよび後述のVDMAなどが合同で主催し、35の業界団体がOPC UAとのコラボレーションだけをテーマに参画したイベントとなります。メイン会場での講演には350人を超える参加者が集まり、会場には参加団体のコラボレーションを紹介する立て看板が準備されました。また、各コーナーで簡単な展示やディスカッションができるようになっていました。

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図4 「1st World Interoperability Conference」の様子(クリックで拡大)出典:日本OPC協議会

 OPC Foundationの発表では2019年4月の時点で50を超えるコラボレーションが存在しているといいます。その中で30以上が、ドイツの機械工業会の連盟組織であるVDMAによって行われています。その活動のほとんどが「1st World Interoperability Conference」で紹介されました。VDMAの活動では連盟組織であるメリットを生かして、各分野のエキスパートが集まってユースケースを検討していきます。そして、複数の分野で共通化できるものは同じ情報モデルを利用するなど、設計する情報モデルを階層的に整理しながら進めています。これらの個々の成功を、VDMAと協調しながら、全てのコラボレーションに反映させようという動きも生まれています。その他にもさまざまな形でOPC UA情報モデルの設計を支援しようという議論が起こっています。

≫連載「OPC UA最新技術解説」の目次


著者紹介:

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日本OPC協議会 技術部会長 藤井稔久(ふじい としひさ)

 日本OPC協議会では技術部会長として国内におけるOPCの普及と維持に努める。OPC UAの国際標準化を審議するワーキンググループ(IEC/SC65E/WG8)の国内委員会幹事を務め、その功績により日本電気計測器工業会の国際標準化作業貢献賞を2014年に受賞。現在も国際エキスパートとして規格化に貢献する。

 アズビル株式会社では産業オートメーションシステムのソフトウェア開発に従事し、フィールドバス、分散制御システム(DCS)、製造実行システム(MES)、クラウドアプリケーションに携わる。



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