インダストリー4.0で重要な役目を果たす、Windows生まれの「OPC UA」:IoT観測所(20)(1/3 ページ)
Windows OSで使われていたOLEを発端とする産業オートメーション標準規格が「OPC UA」だ。トランスポート〜プレゼンテーション層に相当する機能を提供しながら上下層の規定がないという柔軟性を持ち、インダストリー4.0においても重要な役割を担う。
産業用ネットワーク「PROFINET」について紹介した前回で予告した通り、今回はまず「OPC Foundation」について紹介する(関連記事:産業用ネットワーク「PROFINET」はIIoTを実現するのか)。
“OPC”は“Object Linking and Embedding for Process Control”の略という事になっており、OPCの前身はOLE for Process Controlと呼ばれていた。ここで言うOLEは“Object Linking and Embedding”で、Windows 9xをご存じの方にはピンとくるかもしれない。要するにMicrosoft Windows上で動作する、複数アプリケーションをリンクするための仕組みである。
これを使うとWord書類の上にExcelのシートを貼り付けるなんて事が「技術的には」可能になる(ただし実際にやるとメモリが足りなくなって落ちたりする)仕組みであるが、これをプロセスコントロールの分野に応用したのが「OLE for Process Control」である。
現在この仕様はOPC Classicとして扱われているが、OLEを前提にしている時点でWindows環境でしか利用できないため、これをもっと広範に利用できるようにした(OPC用語ではUnified Architectureと称されている)のが「OPC(OPC UA)」である。
物理層の縛りがなかった「OPC Classic」
OPC Foundationが設立されたのは1994年の事である。設立したのはFisher-Rosemount(現 Emerson Process Management)、Rockwell Software、Rockwell Automation(の一部)、Opto 22、Intellution(元はEmerson Process Managementの一部門で、その後GE Fanucが買収、ファナックとの合弁解消に伴い現在はGE Intelligent Platformsの傘下)、Intuitive Technology Groupの5社である。
各社へのリンク先を見れば分かる通り、いずれも産業機器やシステムを手掛ける会社である。この5社がなぜOPC Foundationを設立し、そして標準規格として1996年にOPC standardをリリースしたのか、という理由がこちらである(Photo01)。
Photo01:これは製造科学技術センターが2008年に開催した「製造業XMLフォーラム2008」( http://www.mstc.or.jp/mfgx/event/20080623-F/kekka.html )における、「OPCの最新動向」( http://www.mstc.or.jp/mfgx/event/20080623-F/file/opc.pdf )というスライドから引用させていただいた
製造・生産現場ではさまざまなプロセス管理システムや制御システムが、それぞれ勝手な規格や仕様で動作していたわけで、大規模システムではこれの統合が悪夢と化していたのは間違い無い。これをまとめるためには、機器とアプリケーションの間の標準化を策定し、全ての機器やコントローラーベンダーがこれに準拠する事が必要、という認識があったからこそ、前述の5社が標準化団体を立ち上げ、そこで制定されたのが「OPC Classic」というわけだ。
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