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産業用ネットワーク「PROFINET」はIIoTを実現するのかIoT観測所(19)(1/3 ページ)

今回はFAとPAの双方をカバーするフィールドバスとして重用されている、イーサネットベースの産業用ネットワーク「PROFINET」を取り上げる。オープン規格であるため、IIoT(Industrial IoT)を実現する規格であるともいえるが、そう単純なものではない。

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 今月はちょっと趣向を変えて、IoTの中でもとくに工場系で利用されるIIoT(Industrial IoT)向け規格である「PROFINET」をご紹介したいと思う。

 PROFINETの前身と書くとものすごく語弊があるのだが(基本的には別のもの)、元の考え方というか使われ方をした規格に「PROFIBUS」と呼ばれるものがある。分類としてはフィールドバス(Field Bus)と呼ばれるものだ。まずはこの話をちょっとしたいと思う。

製造装置の進化で需要の増したフィールドバス

 フィールドバスは工場や生産現場、屋外など過酷な環境下でシステム同士をつなぐためのもの(=Bus)である。ちょっと昔話になるが、25年ほど前に国内の某社様工場にイーサネット(25年ほど前なので10BASE5)ネットワークの敷設に絡んで伺った事があるのだが、工場そのものが広すぎて1セグメント(最大500m)で足りないとか、ノイズが激しくて一部箇所ではシールドが必要(たしかそのエリアはコンジットパイプの中を通すことにして、そのコンジットパイプをアースして回避したような)とか、通常のオフィスやマシンルームではありえない状況と回避策がいろいろと必要になった。そうはいっても当時、ほとんどの機械はアナログ制御でNCのたぐいもそう多くは無かったし、シーケンサを使うようなものは、その機械の真横にシーケンサが設置されていたから、フィールドバスはへのニーズそのものがそう多くはなかった。

 ところがさまざまな機械が高性能化してコンピュータ制御が当たり前になり、生産管理システムを導入する過程でさまざまな装置を集中管理・データ収集を行うニーズが出てくる様になると、こうした過酷な環境で確実に通信を行うための手段が必要になる。そこで、こうした環境に向けた専用バスがいろいろと考案された。

 有名なところでは「AS-i(Actuator Sensor Interface)」や、そのまんまの名前の「Fieldbus」、フィールドバスはというよりはその上位プロトコルにあたる「CIP(Common Industrial Protocol)」、古いところではIntelがMultibusをベースに開発した「Bitbus」などがある。独自規格まで含めると数十種類のフィールドバスが世の中には存在しており、PROFIBUSもそうしたものの1つである。

「PROFIBUS」のあらまし

 PROFIBUSはもともと、1985年頃からドイツの「ZVEI(German Electrical and Electronic Manufacturers' Association:独電気・電子工業連盟)」や「DKE(German Commission for Electrical, Electronic & Information Technologies:独電気電子情報技術委員会)」などで標準化に関する作業が始められ、1987年にはこの2つの機関にパートナー企業など18団体を加えた20団体(これに「BMFT」を加えて21、という数え方もある)で形成されたのがPROFIBUSの始まりである(BMFT:German Federal Ministry for Research and Technology)。

 PROFIBUSは「PROcess FIeld BUS」の略称で、名前の通り生産現場向けのフィールドバスはを目指したものである。当初はZVEIのメンバーにSiemens、Bosch、Klockner-Moeller(現Eaton)の3社を加えて標準化案を策定するという動きであったが、これにどんどんメンバーが加わった。2年間の標準化作業を経て、1989年にはDIN V 19245というドイツ国内での標準化作業が終了。これと並行して国際標準化も進められ、1992年に「ISA S50.12」が策定される。さらにIECでの標準化も進めたものの、こちらでは他のフィールドバス規格とあわせ「IEC 61158」として2003年に標準化が完了する。

 こうした標準化作業とは別に1989年12月、「PNO(PROFIBUS User Organization)」が設立され、PROFIBUSの普及に向けた取り組みが始まる。このPNOは後に「PI(PROFIBUS & PROFINET International)」となり、今回のPROFINETの標準化策定や普及に纏わる作業を行っているが、その前にもう少しだけPROFIBUSの話ということで、こんな経緯で策定されたPROFIBUSがどんなものか説明しておきたい。

 1989年に策定されたPROFIBUSの最初の規格は「PROFIBUS FMS(Field bus Message Specification)」だが、プロトコルがやや複雑なものであり、処理が重いということであまり評判は良くなかった。特にフレームサイズが大きい割に転送できるデータ量が少なく、またリアルタイム性にも欠ける点が嫌われた。

 このPROFIBUS FMSはホストコンピュータとPLC(Programmable Logic Controllers)間の通信に重点を置いたものだったが、逆に生産現場の装置との通信には無駄が多かった。ということでこのFMSに代わるものとして1993年に「PROFIBUS DP(Decentralized Peripherals)」が登場し、1995年に「PROFIBUS PA(Process Automation)」が加わった。先にIECでの標準化を行った話に触れたが、対象になっているのはこのPROFIBUS DPとPROFIBUS PAで、PROFIBUS FMSは国際標準からは省かれている。

 PROFIBUS DPはRS485/RS485-iSと光ファイバーを利用するもので、RS485/光ファイバーで9.6K〜12Mbps、RS485-isで9.6K〜1.5Mbpsの速度で通信を行う。送受信はマスタースレーブ方式で、マルチマスターもサポート。1本のバスには最大126台のデバイス(=マスター+スレーブ)を接続できる。通信プロトコルにはDP-V0〜DPV2まで3種類の機能レベルが用意され、周期的データ交換・非周期的データ交換・ブロードキャストなどがサポートされている。

 これに対してPROFIBUS PAは速度が31.25Kbpsに抑えられている。こちらは防爆仕様ということで、可燃性/可爆性の高い環境においても、誤動作時にスパークなどを発生して引火誘爆などを発生しないように配慮されている。その分電流なども弱いため、速度が低く抑えられているというものだ。通信プロトコルなどはPROFIBUS DPとほぼ同じである。

 さて、このPROFIBUSはそれなりに広く利用された。PROFIBUS DP/PAはOSIのネットワーク参照モデルに従えば第3〜6層にあたる規格であるが、第7層にあたるApplication層向けに幾つかのプロファイルを提供しており、この中には20軸以上の工作機械の制御の同期を取る事も可能な同期用の「PROFIdrive」や、安全システム向けの「PROFIsafe」といったプロファイルも含まれており、これらは現在も広く利用されている。2007年の時点では、こうしたPROFIBUSを利用したシステムは全世界に2000万台以上存在しているとされる。

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