産業用ネットワーク「PROFINET」はIIoTを実現するのか:IoT観測所(19)(2/3 ページ)
今回はFAとPAの双方をカバーするフィールドバスとして重用されている、イーサネットベースの産業用ネットワーク「PROFINET」を取り上げる。オープン規格であるため、IIoT(Industrial IoT)を実現する規格であるともいえるが、そう単純なものではない。
PROFINETとは
ということで前書きが終わったのでPROFINETの話を。
先にPNOが1989年に設立されたと書いたが、これはドイツ国内の団体である。その後に各国で同様の団体が設立されており、日本でも日本プロフィバス協会が1997年に設立されている。こうした各国のユーザーグループを束ねる団体として1995年に設立されたのが、「PI」である。
このPIが次に携わったのが、物理層にイーサネットを利用する規格である。1990年代後半からPNOは外部からも識者を招いてイーサネットをフィールドバスに利用するためのワーキンググループを設けて作業を始めており、2001年秋に開催されたHanover Fairにおいてこのイーサネットを利用した新しいフィールドバスのパイロットアプリケーションのデモを行うまでに至っている。
この時点で既にPROFINETの仕様のドラフトが完成しており、2002年にはこのPROFINETに準拠した最初の製品が登場する。このPROFINETの解説は、既に粕谷忠広氏の「いまさら聞けないPROFINET入門」があるので、繰り返しの説明は割愛する。
要するに物理層にイーサネットを利用する産業用ネットワークであるが、リング/ライン/スター/ツリーなどさまざまな接続形態をサポートする仕組みや、TCP/IPとの部分的な共存(NRT:Non Real-Time転送モードではTCP/IPをベースに通信できる)やRT(RealTime:転送時間保障)、それにIRT(Isochronous Real-time:転送保障)などのサポートなど、イーサネットをベースにフィールドバスに求められる要件を追加していったところ、単にイーサネットにPROFIBUSのプロトコルを載せるという形では実装が間に合わなくなっている。この結果、PROFIBUSとPROFINETは、同じ団体が手掛けてはいるものの、基本的に別のものとなっている。
ただしプロファイルに関して言えば、PROFINETでもPROFIsafeとかPROFIdriveなどのプロファイルが利用可能(他にもPROFIenergyが追加された)であることからPROFIBUSからの移行を容易にしており、性能の高さなどもあって急速にPROFINETの普及も進んでいる。
2003年にPROFINET IOの仕様は公開されたが、2007年には既に100万台の機器がPROFINETに対応、2009年には200万台に達した(ちなみに2009年にはPROFIBUS対応デバイスは3000万台に達している)。その後も台数は着々と増えており、2013年4月における日本プロフィバス協会のリリースによれば、2013年時点でPROFIBUS機器は4380万台、PROFINET機器は580万台に達しているとする。
いまだにPROFIBUS機器が増えている、というあたりがフィールドバスの使われ方を示唆しているともいえるが、PROFINET機器も結構なペースで増えており、いずれはPROFINETがPROFIBUSを置き換える日がやってくるかもしれない。
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