産業用ネットワーク「PROFINET」はIIoTを実現するのか:IoT観測所(19)(3/3 ページ)
今回はFAとPAの双方をカバーするフィールドバスとして重用されている、イーサネットベースの産業用ネットワーク「PROFINET」を取り上げる。オープン規格であるため、IIoT(Industrial IoT)を実現する規格であるともいえるが、そう単純なものではない。
IoT標準とPROFINET
さて、この連載はIoT標準を説明している訳だが、これとPROFINETがどう関わってくるか、というのが最後の話である。
2015年12月、USのPNOは「The PROFINET of Things」なるホワイトペーパーをリリースした。なかなか示唆に富むものだが、IIoTを「IoTとIndustrie 4.0の両方の特徴を持つもの」と定義した(Photo01)上で、具体的にIoTとIIoTの特徴を列挙して比較している(Photo02)。
ホワイトペーパーの骨子は、このIIoTを形成する「Data Access」と「Uptime」「Openness」の3つを取り上げ、「いずれの要素も既にPROFINETでは実現されており、それゆえPROFINETは既にIIoTを実現している」というものだ。このあたりは、IIoTをどう考えているのか、という根底に関わる部分でもある。
筆者のIoTの定義は「Cloud Connectivityを持ったM2M」で、これはIIoTの場合でも基本的には変わらない。なので、PROFINETが適切なCloud Connectivityを提供できるのであれば、PROFINETはIIoTだと言って差し支えないと思うのだが、今の所Cloud Connectivityに関してはプロセスコントローラー任せとなっており、特にプロファイル類も存在しないし、特にRT/IRTを利用する接続形態ではCloud Connectivityはないに等しいので、正直、筆者はこれをIIoTと呼ぶことにはやや抵抗がある。
ただこれには別の見方もある。PROFINETそのものにはCloud Connectivityが存在しないのだが、OPC(Object Linking and Embedding for Process Control)Foundationとのコラボレーションによって、これを補完するという動きだ。
PITC(PROFINET & PROFIBUS International Training Centres)の議長を務めるPeter Thomas氏は“PROFINETはIndustory 4.0とIIoTのバックボーンだ”という言い方でこれを表現する。ただこれを説明するには、OPC FoundationやIndustrie 4.0の話も説明しないといけない。ということで次回からしばらくはこの当たりを説明していきたいと思う。
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