全方向に連続移動できる円形断面型クローラーを開発:ロボット開発ニュース
NEDOと東北大学は、全方向に連続して移動できる円形断面型クローラーを開発した。従来の車輪では走行が難しい状況でも、クローラーの向きを変えることなく、縦、横、斜めにスムーズに移動できる。
NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機)と東北大学は2019年8月26日、全方向(360度方向)に連続して移動できる、円形断面型クローラー(履帯)を開発したと発表した。
今回開発されたクローラーは、歯車とチェーン、ベルトを用いることで、摩擦伝動によらない高い駆動力が伝達できるようになった。また、放射状に最密配置したクローラーにより、モーターの回転方向を切り替えずにスムーズに移動する。
不整地の走破性に優れ、軸方向の段差は10mmの高さを乗り越え、その直交方向の段差は30mmを乗り越える。溝は140mmの長さを踏破可能だ。柔らかいじゅうたんや点字ブロックの段差、踏切内の線路の溝など、従来の車輪では走行が難しい状況でも、クローラーの向きを変えることなく、縦、横、斜めに移動できる。
新技術の核となったのは、新たに考案した全方向移動用のスクリュー式差動回転機構だ。ねじ歯車が回転軸の動力を垂直方向に変換する構造を線対称に配置することで、左右両側の入力回転を前後左右の移動につながる公転、自転の出力に変換する。
同クローラーは、全方向移動に必要な2つのモーターと平歯車やねじ歯車といった最小限の動力伝達装置からなる単純な構成であるため、保守性や小型化の面でもメリットを有する。
これまでに東北大学が開発した「オムニクローラー」は、斜め方向に移動する際、モーターの回転方向を切り替える必要があり、任意の方向へ連続的に移動するのは困難だった。新開発の円形断面型クローラーは、全方向への連続移動に加え、オムニクローラーの優れた耐荷重性や走破性を維持することから、電動車いすや移動型ナビゲーションロボット、巡回警備ロボットなど、重量の大きなモビリティー用駆動機構としての用途が期待される。
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