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ロボットの関節がしなやかになる「世界初」のギヤ、減速比100:1でも逆駆動可能メカ設計ニュース

NEDOと横浜国立大学は、従来不可能だった100:1を超えるような高い減速比の減速機でも逆駆動が可能となる「世界初」のギヤ「バイラテラル・ドライブ・ギヤ」を開発したと発表した。

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逆駆動可能なバイラテラル・ドライブ・ギヤ
逆駆動可能なバイラテラル・ドライブ・ギヤ(クリックで拡大) 出典:横浜国立大学

 NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)と横浜国立大学は2019年1月30日、従来不可能だった100:1を超えるような高い減速比の減速機でも逆駆動が可能となる「世界初」(リリース文より)のギヤ「バイラテラル・ドライブ・ギヤ」を開発したと発表した。これにより、ロボットの関節を外力に対して柔軟に動かせるようになり、EV(電気自動車)のエネルギー回生の効率向上も図れるという。今後は、減速比1000:1の実現などを目指すとともに、開発プロジェクトに参加する日本電産シンポによる実用化も検討している。

 今回開発したバイラテラル・ドライブ・ギヤの基本構造は、複合遊星減速機構と呼ばれるものと同じである。複合遊星減速機構は、太陽とその周りを回る(公転する)惑星のように、中心の歯車である太陽歯車と、公転する歯車の遊星歯車、さらに遊星歯車にかみ合って回転する内歯車から構成される遊星歯車機構を同軸上に2段に重ねたものだ。その長所である高い減速比により大きなトルクを伝達できることで、小型化と軽量化を実現するとともに、各歯車形状について、最も多く使われているインボリュート曲線※)とすることにより低コストを可能とした。

※)インボリュート曲線:曲線に巻き付けた糸を引っ張りながら解きもどすとき、その糸状の定点の描く曲線のこと。一般的には、円に巻き付けたものをいう

バイラテラル・ドライブ・ギヤの構造
バイラテラル・ドライブ・ギヤの構造(クリックで拡大) 出典:横浜国立大学

 さらに減速比を任意に指定しながら、各歯車の歯数と転移係数を変数として動力伝達効率を最大化する自動計算ソフトを開発。複合遊星歯車機構の短所である設計の難しさを解決した。

 試作したバイラテラル・ドライブ・ギヤは、減速比が102.1:1でありながら、順駆動動力伝達効率が89.9%という高い値を示した。また、逆駆動動力伝達効率は、従来の減速機と比べて約30%向上となる89.2%となった。増速起動トルク(逆駆動トルク)も、同約300分の1となる0.016Nmに低減できている。

 このバイラテラル・ドライブ・ギヤを使えば、ロボットの関節が外力に対して柔軟に動くことを可能とするだけでなく、エネルギー回生の効率化を図るとともに、モーター情報による負荷トルク推定も可能になる。小型軽量化、低コスト化、省エネ化を同時に実現できるため、今後、協働ロボットやアシストロボット、移動ロボットなどの関節部材や、EVの変速機などへの展開が期待できる。

外力に対して柔軟に動く逆駆動性がないと接触の衝撃を吸収できない

 一般的に、ロボットの関節に使用されている減速機は、外力に対して柔軟に動く逆駆動性がないとされている。このため接触の衝撃を吸収できず、結果として人の安全を十分に確保することができない。

 また従来の減速機は、減速比が高くなると、順駆動動力伝達効率が双曲線的に低下し、逆駆動動力伝達効率は線型的に低下する性質がある。今回のバイラテラル・ドライブ・ギヤのような100:1の減速比では、逆駆動ができなくなってしまう。

順駆動動力伝達効率と逆駆動動力伝達効率との関係従来減速機における減速比と動力伝達効率の関係 順駆動動力伝達効率と逆駆動動力伝達効率との関係(左)と、従来減速機における減速比と動力伝達効率の関係(右)(クリックで拡大) 出典:横浜国立大学

 そして、ロボットの中核部品である減速機は、古くから数多く研究されてきていることもあり、大きな改善の余地はないと考えられていた。

 NEDOが2015年に立ち上げた「次世代人工知能・ロボット中核技術開発プロジェクト」では、現在の人工知能(AI)、ロボット技術の延長線上にとどまらない、人間の能力を超えることを狙った革新的な要素技術開発を進めている。その中で横浜国立大学が取り組んできた「高効率・高減速ギヤを備えた高出力アクチュエータの研究開発」の成果となるのが、バイラテラル・ドライブ・ギヤとなる。

 横浜国立大学では、減速比1000:1の実現や高速回転型モーターとモータードライバー、これらを一体化したアクチュエータの研究を継続する方針。なお、今回開発したバイラテラル・ドライブ・ギヤは「テクニカルショウ ヨコハマ2019」(2019年2月6〜8日、パシフィコ横浜)に出展される。

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