2030年の動力伝達技術の在り方とは、自動車メーカーらが技術研究組合を発足:エコカー技術
自動車メーカー9社とアイシン・エィ・ダブリュ、ジヤトコで結成した「自動車用動力伝達技術研究組合」が、共同研究組織として始動する。事業費は約2.6億円で、組合員各社が派遣する技術者合計100人が活動する。
自動車メーカー9社とアイシン・エィ・ダブリュ、ジヤトコで結成した「自動車用動力伝達技術研究組合(※)」は2018年5月15日、東京都内で会見を開き、共同研究組織として始動することを発表した。事業費は約2.6億円で、組合員各社が派遣する技術者合計100人が活動する。
(※)Transmission Research Association for Mobility Innovation、略称TRAMI(トラミ)
TRAMIは動力伝達技術の基礎・応用研究で産学の連携を強化し、技術開発力の底上げや人材育成を図り、欧州や中国に対する国際競争力の向上を目指す目的で設立した。従来は企業と大学が1対1で行う単発の要素研究に終始しており、テーマの深堀りや広がりがなかった。駆動領域を扱う研究室が大学にほとんどないことも課題となっていた。
そのため、モデルベース開発を活用して大学と企業の“距離感”を縮めるとともに、研究成果をデータベース化して組合員が共有、活用できるようにする。今後は関連する部品メーカーや計測器メーカー、経済産業省なども巻き込んでいきたい考えだ。日本国内に開発拠点と生産拠点を持っていれば、外資系サプライヤーも参加できる。
理事長は本田技術研究所 四輪R&Dセンター 上席研究員の前田敏明氏が務める。理事はトヨタ自動車や日産自動車、マツダ、アイシン・エィ・ダブリュが、監事は試験機メーカーの新日本特機が担当する。
2030年の動力伝達技術を見据えて
自動車技術会の動力伝達システム共同研究推進委員会が母体となって2018年4月2日に独立してTRAMIが発足した。参加する自動車メーカーはトヨタ自動車、日産自動車、本田技術研究所、マツダ、SUBARU(スバル)、三菱自動車、スズキ、ダイハツ工業、いすゞ自動車の9社。日野自動車は参加を見送った。
TRAMIの発足に先行して、産学連携研究のトライアルを2016〜2017年の2年間で実施した。具体的には、トランスミッションの伝達ロスや重量、音・振動をそれぞれ半減させるという目標に基づき、駆動系の基礎技術と検討対象となる部品を洗い出し、学術テーマを立てた。2018年からはTRAMIの研究会や委員会と連携して本格的な研究を始める。2030年の技術進化を見通して、2020年、2025年、2030年の3ステップで研究テーマを設定している。成果は自動車メーカーが社内の製品開発に活用していく。
TRAMIの研究体制は、モデルベース開発を推進する「モデル戦略委員会」が各テーマの研究会に横串を刺して研究成果を管理する。委員会と研究会は次の通り。カッコ内はリーダー企業。
- 法務・知財委員会(トヨタ自動車)
- モデル戦略委員会(本田技術研究所)
- モデル戦略研究会(本田技術研究所)
- 合同調査・計測技術研究委員会
- 合同調査研究会(日産自動車)
- 計測技術研究会(スズキ)
- 動力伝達基礎研究委員会(ジヤトコ)
- 機械摩擦・熱研究会(いすゞ自動車)
- GEAR分科会(SUBARU)
- CVTベルト挙動研究会(トヨタ自動車)
- 流体制御研究会(ダイハツ工業)
- 流体摩擦・熱研究会(マツダ)
- 機械摩擦・熱研究会(いすゞ自動車)
- 電動化研究委員会(アイシン・エィ・ダブリュ)
- 電動化研究会(アイシン・エィ・ダブリュ)
TRAMIが目指すのは、環境性能と走行性能を高い次元で両立する基盤技術の確立だ。環境規制に対応するためパワートレインは多様化が進んでおり、電気自動車や燃料電池車などトランスミッションを必要としないクルマも出てくる。しかし、動力源の形式に関わらず、ギアやシャフト、デフ、変速機構、クラッチやトルクコンバーターは使用するため、今後も動力伝達システムの技術開発が不可欠だという考えだ。
また、トランスミッションは市場ごとに嗜好が異なり、北米は有段AT、欧州はMTやDCT(デュアルクラッチトランスミッション)、日本はCVTやハイブリッドシステムなど無段変速機が好まれる。自動車メーカーやサプライヤーはさまざまなトランスミッションを網羅しなければならないが、摩擦抵抗の低減や摩耗メカニズムの解明など、基礎研究に要求されるテーマは共通する。その部分をTRAMIで扱う。
クラッチやベアリング、オイルポンプ、制御系などに関わるサプライヤーにも参加を募る。サプライヤーとTRAMIの具体的な連携方法については、2018年10月ごろをめどに方針をまとめる。ベンチマークとなる競合企業の製品の調査や計測、同定技術には計測器メーカーの協力も得ていく。計測器メーカーにはエンジニアリング機能を担ってもらうことを期待している。
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