出光興産、プラント生産システムの通信方式に「OPC UA」を全面採用:FAニュース
出光興産は2019年8月13日、複数の製油所や事業所で構成される大規模生産システムの主要通信方式として「OPC UA」を採用したことを発表した。製油所の情報セキュリティ強化を目的とし、OPC UAを用いた次世代データ通信システムを構築する。
出光興産は2019年8月13日、複数の製油所や事業所で構成される大規模生産システムの主要通信方式として「OPC UA」を採用したことを発表した。製油所の情報セキュリティ強化を目的とし、OPC UAを用いた次世代データ通信システムを構築する。
製造業におけるIoT(モノのインターネット)活用が広がりを見せる中、社会インフラを狙ったサイバー攻撃の脅威も高まっている(※)。
(※)関連記事:なぜ今、制御システムセキュリティがアツいのか?
こうしたサイバー攻撃から製油所を守り、国内のエネルギーセキュリティを強化することを目的に、出光興産では北海道製油所、千葉事業所、愛知製油所、徳山事業所の4事業所のヒストリカルデータベース(製油所の装置や制御システムの稼働率や温度、圧力などの情報を収納したデータベース)のほぼ全ての通信方式をOPC UAを用いるシステムに更新した。
OPC UAは、産業用アプリケーションの相互運用を実現するオープンなインタフェース仕様である。さまざまな環境におけるデータの相互運用性を確保できることが特徴だ。工場内にあるデバイスや生産制御用の機械、監視用のHMIなどが、OPC UAを組み込むことで自由で簡単にデータ交換ができるようになる。ドイツのモノづくり革新プロジェクトである「インダストリー4.0」の推奨通信規格とされたことから、大きな注目を集めるようになった(※)。
(※)関連記事:「OPC UA」とは何か
出光興産ではOPC UAへの更新により「製造現場の制御システムとITシステム間のインタフェースを統一し、高度な生産体制を構築できるだけではなく、従来の通信方式と比較し、外部からの不正アクセスによる悪質な攻撃の危険性を大幅に低減できる」とコメントしている。
出光興産では以前から、IoT技術を活用した製油所の競争力強化を推進している。業界に先駆け製油所のリアルタイム操業マネジメントシステム「XHQ(neXt generation HeadQuarter)」を2008年に導入。2019年にはAI(人工知能)を活用した配管腐食システムの実証実験にも参加しており、今後も引き続き先進技術を活用した製油所の高度化に取り組む方針を示している。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 「OPC UA」とは何か
スマート工場化や産業用IoTなどの流れの中で大きな注目を集めるようになった通信規格が「OPC UA」です。「OPC UA」はなぜ、産業用IoTに最適な通信規格だとされているのでしょうか。本連載では「OPC UA」の最新技術動向についてお伝えする。第1回である今回は、あらためて「OPC UA」の概要と位置付けを紹介する。 - なぜ工場ネットワークで「OPC UA」が注目されるのか
スマート工場化など工場内でのIoT活用が広がる中、注目度を高めているのが「OPC UA」だ。本稿では、OPC UAの解説を中心に工場内ネットワークで何が起きようとしているのかを紹介する。第1回は工場内ネットワークの仕組みと、なぜ「OPC UA」が注目を集めているのかについて説明する。 - 主要規格と続々連携、ハノーバーメッセを席巻したOPC UAのカギは“間をつなぐ”
OPC UAなどのOPC規格の普及促進などを進めるOPC Foundationは、ハノーバーメッセ2019(2019年4月1〜5日、ドイツ・ハノーバーメッセ)において、業界独自の通信規格などを展開する主要団体と続々と連携し、産業用IoTなどでカギを握る異種システム間連携の業界標準的地位を確立しつつあることをアピールした。 - なぜ工場でネットワークを考えないといけないのか
インダストリー4.0や工場向けIoTなどに注目が集まっていますが、そもそも工場内のネットワーク環境は、どのように構築すべきなのでしょうか。本連載では、産業用イーサネットの導入に当たり、その基礎から設備設計の留意点などを含めて解説していきます。 - 工場の「つながる化」を可能とする「管理シェル」とは何か
ロボット革命イニシアティブ協議会(RRI)の“IoTによる製造ビジネス変革WG(WG1)”では、ドイツが進めるインダストリー4.0において、データ連携を実現する重要なカギとされている「管理シェル」について調査を行い、これを解説する調査報告書をリリースした。本稿ではこの概要を紹介する。 - インダストリー4.0がいよいよ具体化、ドイツで「実践戦略」が公開
注目を集めるドイツのモノづくり革新プロジェクト「インダストリー4.0」。この取り組みを具体化する「実践戦略」が2015年4月に示された。同プロジェクトに参画するドイツBeckhoff Automationグループに所属する筆者が解説する。