MOMO4号機は宇宙から紙飛行機を飛ばす、ギネス記録保持者が発案:宇宙開発(2/2 ページ)
ロケット開発ベンチャーのインターステラテクノロジズ(IST)が、観測ロケット「MOMO」4号機の打ち上げについて発表。2019年5月の3号機の打ち上げ成功から間を置くことなく2019年夏に打ち上げを行う計画で、今後のMOMOの量産開発と事業化に向けた実証実験の位置付けになる。
MOMO4号機に課せられた7つのミッション
MOMO4号機の仕様は、基本的には3号機と変わらない。推力1.2kN(トン)、全備重量1150kg、ドライ重量330kg、機体全長9.9m、機体直径500mm、目標到達高度100kmとなっている。3号機と異なるのはスポンサーとミッションだ。
スポンサーとしては、ネーミングライツでマッチングアプリのpaters(ペイターズ)が、機体スポンサーで実業家の丹下大氏とメガネチェーンのOWNDAYS(オンデーズ)が入った。MOMO4号機の正式名称は、ネーミングライツに基づき「ペイターズドリームMOMO4号機」となる。
ミッションは、「宇宙から折り紙飛行機を飛ばしたい!」「日本酒でロケットを打ち上げたい!」「宇宙で音を捉えたい!」「コーヒーを宇宙に飛ばしたい!」「ハンバーガーを宇宙に届けたい!」「メガネを宇宙に送りたい!」「ひふみろを宇宙に連れていきたい!」の7つを設定した。これらの中で注目されるのが、新たな取り組みとなる「宇宙から折り紙飛行機を飛ばしたい!」と「日本酒でロケットを打ち上げたい!」だろう。
「宇宙から折り紙飛行機を飛ばしたい!」の発案者はキャステム 社長の戸田拓夫氏だ。MOMO4号機のフェアリングとタンク部の間に、直径2cmの穴と放出機構を設け、3機の紙飛行機を高度100km以上のサブオービタルから宇宙空間に放出する。
紙飛行機の室内滞空時間でギネス記録を持つ戸田氏は「宇宙から紙飛行機を飛ばすのは世界初のチャレンジになる。10年以上前から暖めてきたアイデアであり、一度は産官学連携プロジェクトで実現する可能性もあったが、頓挫した過去がある。今回、堀江氏にこのアイデアを相談したところ、MOMOでやってみないかと言っていただき、今回のミッションにつながった」と語る。
課題になったのは、直径2cmの穴から放出できる紙飛行機の形状だ。戸田氏が考案したのは扇子のように棒状に折り畳める紙飛行機「宇宙扇(うちゅうせん)」だった。長さは12cm、開いた時の横幅が8cm、重さは2gになる。「滞空性能が高いとはいい難いが、それでも3機の内1機くらいは地表まで降下できるのでは」(同氏)とみている。なお、本ミッションが成功した場合には、カメラを組み込んで降下する映像を取得することなども検討している。
ISTの稲川氏も「放出機構によって宇宙でモノを打ち出したり、逆に宇宙にあるモノを回収することができたりすれば、MOMOの使い道が広がる。紙飛行機のミッションによってその可能性を探りたい」と述べる。
「日本酒でロケットを打ち上げたい!」は、和歌山県の平和酒造の発案によるものだ。同社はMOMO応援酒となる「紀土(きっど) 純米大吟醸宙(そら)へ!!」の収益を、MOMOのスポンサー費用に充てる取り組みなどを行っている。これと併せて、MOMOの燃料が炭化水素系燃料のエタノールであることに着目し、MOMO応援酒を蒸留したエタノールを燃料のエタノールに添加して打ち上げを行う。「ロケット燃料にお酒を添加するのは世界初」(平和酒造)とのことだ。
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