「社会イノベーションといえば日立に」、東原社長が2021年度中計に意気込み:製造マネジメントニュース
日立製作所が同社の事業方針を投資家向けに説明する「Hitachi IR Day 2019」を開催。その冒頭、「CEO Remarks」として、同社執行役社長 兼 CEOの東原敏昭氏が登壇し、2019〜2021年度の中期経営計画について説明した。
日立製作所は2019年6月4日、東京都内で同社の事業方針を投資家向けに説明する「Hitachi IR Day 2019」を開催。その冒頭、「CEO Remarks」として、同社執行役社長 兼 CEOの東原敏昭氏が登壇し、同年5月10日に発表した2019〜2021年度の中期経営計画(以下、2021中計)について説明した。
2021中計では「社会イノベーション事業でグローバルリーダー」「社会価値・環境価値・経済価値を重視した経営」「重点分野への積極投資」「経営体制の強化」という4つの方針を挙げている。東原氏は「『社会イノベーション事業でグローバルリーダー』になるというのは、競合他社に追従するのではなく、われわれ自らが将来像を描いていくことだ。また、『社会価値・環境価値・経済価値を重視した経営』では、社会貢献を理念とした1910年の創業時への原点回帰を目指している。『重点分野への積極投資』では、前期中計の実績で5000億円だった成長投資を2兆〜2兆5000億円に増やす。そして『経営体制の強化』では、KPIとしてROIC(投下資本利益率)を導入することで資本効率を向上していく」と語る。
これら4つの方針を基に、顧客の3つの価値(社会価値、環境価値、経済価値)を同時に向上できる、モビリティ、ライフ、インダストリー、エネルギー、ITという5つのソリューションを展開する。そしてその基盤になるのが、IoT(モノのインターネット)プラットフォーム「Lumada」であり、各ソリューションにひも付くプロダクトになる。
2019年4月からの2021中計を推進する事業体制は、これら5つのソリューションに対応する5つのセクターが中核的な役割を果たす。2018年度まで、事業展開の中核を担ってきたビジネスユニットはセクターの傘下に組み込まれることになる。
東原氏は、2021中計において、5つのセクターの中でもITセクターとインダストリーセクターに重点投資する方針を明言した。「ITセクターでは、投資家からの期待も大きい、Lumadaの拡充とグローバル展開の加速を進める。インダストリーセクターは、産業システムインテグレーションを強化し、グローバル展開を加速する。既に北米のJRオートメーションを買収しているが、さらなる重点投資を行う」(同氏)という。
2021中計3年間の投資内訳については、先述した成長投資となる2兆〜2兆5000億円の他、設備投資、株主還元などに1.8兆円規模を費やす。これらの原資としては、営業キャッシュフローで2.5兆円以上の他、借入金や資産売却などを加えて4兆〜4兆5000億円を捻出する。また研究開発投資も、前期中計比で20%増となる1兆2000億円規模を予定している。
2021中計の目標値は、売上収益年成長率が3%超、調整後営業利益率が10%超、ROICが10%超。各セクターの2021年度の目標値は、ITが売上高2兆6000億円、調整後営業利益率13.0%、ROIC15.0%、エネルギーが売上高1兆7000億円、調整後営業利益率10.0%、ROIC7.5%、インダストリーが売上高1兆円、調整後営業利益率10.0%、ROIC10.8%、ライフが売上高2兆1000億円、調整後営業利益率10.0%、ROIC15.0%、モビリティが売上高1兆2700億円、調整後営業利益率9.8%、ROIC13.1%である。
最後に東原氏は「価値向上をLumadaで提供していく。そして『社会イノベーションといえば日立』と呼ばれるようになりたい」と述べている。
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