タイで進むタイランド4.0、日立製作所が取り組むASEANのデジタル変革:第4次産業革命の現在地(1/4 ページ)
全世界的に第4次産業革命への動きが加速する中、タイでもタイランド4.0とする政策が進行。政府間での協力での覚書なども締結されているが、民間でも日本企業とタイ企業との連携強化の動きが進む。その中で日立製作所はいち早くタイにIoT拠点である「Lumada Center Southeast Asia」を設立し、東南アジア地域企業のデジタル変革を支援する取り組みを行う。日立製作所の取り組みを追う。
第4次産業革命の動きは全世界的な広がりを見せている。IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)関連技術などにより、産業構造が大きく変わろうとする第4次産業革命は、ドイツ政府が推進する「インダストリー4.0」など欧米が中心になっているように見えるが、これらに対応していこうという動きは、欧米だけに限った話ではない。
タイでも同国政府により、2015〜2016年にかけて「タイランド4.0」という新たな産業振興政策が打ち出されており、さまざまな活動が進められているところだ。こうした第4次産業革命への取り組みを日本政府も支援しており、日本政府が打ち出す「Connected Industries」のコンセプトを活用しながら、タイの産業を高度化するよう、両国でさまざまな項目で覚書(MOU)を結び、協力を進めているところである。
こうした中で、日立製作所はいち早くタイにおける第4次産業革命を支援する拠点「Lumada Center Southeast Asia」を設立し、日本企業の現地拠点はもちろん、現地企業の支援などにも取り組んでいる。ここからは「タイランド4.0」や日立製作所の東南アジアでの取り組みなどを紹介する。
タイランド4.0とは
タイ政府が進める「タイランド4.0」は、タイの経済社会発展を段階として示し、新たな産業構造となる第4段階へと進めなければならないといういことを訴えたものだ。第1段階は、農村社会や家内工業を中心とした産業構造であり、第2段階は軽工業を中心に輸入を代替する工業化を進めた段階となる。そして現在の第3段階は、重工業を中心とし輸出志向の工業化を進める段階だとしている。これらの段階を経て成長してきたタイ経済だが、既存のビジネスモデルの延長線上では従来レベルの成長を続けられないという「中所得国のわな」に陥る可能性が指摘されている。
「中所得国のわな」とは、新興国が経済発展により一人当たりGDP(国内総生産)が中程度の水準(中所得)に達した後、発展パターンや経済戦略の転換ができずに成長率が低下したり、低迷したりすることを示している。タイではこの状況を回避し、さらなる成長を持続するために、今までの第3段階と異なる第4段階へ産業構造の変革が必要だとして、「タイランド4.0」を示したというわけである。
「タイランド4.0」では具体的に、ターゲット産業を絞り込み、これらの産業において持続的な付加価値の創造を実現することを目指す。タイの産業は従来はインフラ系や食品系などを除くと、グローバルに展開する外資系企業の請負での産業が多かったが、自ら新たな産業や価値を生み出すことを目指している。
ターゲット産業と位置付けられているのは以下の10業種である。
- 次世代自動車
- スマートエレクトロニクス
- 医療、健康ツーリズム
- 農業、バイオテクノロジー
- 未来食品
- ロボット産業
- 航空、ロジスティクス
- バイオ燃料とバイオ化学
- デジタル産業
- 医療ハブとなる産業
この内「次世代自動車」「スマートエレクトロニクス」「医療、健康ツーリズム」「農業、バイオテクノロジー」「未来食品」については、既にタイ国内にある産業の延長線上の発展として取り組むもので、成果が出やすい領域だと位置付けられている。一方で「ロボット産業」「航空、ロジスティクス」「バイオ燃料とバイオ化学」「デジタル産業」「医療ハブとなる産業」の5つについては、タイ国内にそれほど基盤がなく、この領域で特に外資系企業からの投資を呼び込みたいとタイ政府は考えている。
特にこれらの領域は、日本企業が強みを持っていることもあり、そこに大きな期待感があるとされている。このタイ側からの「デジタル産業」振興への期待に応えたのが、日立製作所の新たなデジタル変革を提案する拠点である「Lumada Center Southeast Asia」の設立ということになる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.