SCADAはIIoTソフトウェアプラットフォームへ進化、その実態に迫る:IIoTの課題解決ワンツースリー(2)(4/4 ページ)
産業用IoT(IIoT)の活用が広がりを見せているが、日本の産業界ではそれほどうまく生かしきれていない企業も多い。IIoT活用を上手に行うためには何が課題となり、どういうことが必要になるのか。本稿ではIIoT活用の課題と成果を出すポイントを紹介する。第2回では、IIoTソフトウェアプラットフォームの役割を果たすSCADAの特徴について紹介する。
監査証跡
製薬や飲料の世界では米国FDA(食品医薬品局)をはじめとする規制が厳しさを増しており、これまで工場で働く優秀な作業員によって信頼性を担保させていた日本は岐路に立たされている。
従来は、優秀な作業員が紙に手書きで履歴を残すことが安全で確かであるという考え方だったが、電子データで履歴を管理する方が安全で確かであるという考え方にシフトした。ミスや改ざんが発生しうる手書きや手入力(人依存)よりも、システムでデータを自動的に記録し、保存していく(人手を介さない)方が、安全で確かである。
さらには、製造品の品質を確保するために一番理想とされているのは全数検査を行うことだが、タクト時間を考慮するとそれは不可能である。そこで考えられる手段として、パラメトリックリリース(製造工程の重要パラメータが設定された基準範値にあることで安全性を保証するという考え方)が注目を集めている。
製造物の全数検査をするのではなく、製造プロセスの重要なパラメータを全て連続的に監視、記録することで、製造物の品質を証明するという発想である。例えば、温度を条件とすると、全ての製造物が各工程でどの温度で製造されたかを履歴に残し、それが既定の±5℃以内ということを証明するといった考え方である。この管理にもIIoTソフトウェアプラットフォームが適しているのである。
SCADAの役割は大きく拡大している
ここまで述べてきた通り、欧州では「SCADA=表示器」から「SCADA=IIoTソフトウェアプラットフォーム」へのシフトが既に進んでおり、生産性向上に既に貢献していることが見て取れる。
国内ではSCADAの浸透が遅れているだけでなく、IIoTでいかに生産性を向上させるかという議論が始まったばかりであるのが筆者の印象である。また、国内では「IIoT=AI」といった考え方も強調されすぎているように感じている。AIが得意な分野は確かに存在するが、それが全てではない。今回述べたような着実な方法で生産性を向上させることがまずは取り組むべき内容であると考える。
次回は、最近注目を浴びている日本発の規格であるEdgecrossやField SystemなどのIoTプラットフォームと、IIoTソフトウェアプラットフォームとなったSCADAの関連性と位置付けについて検証する。そして、派手な機能差としては見えてこないが、スマート工場を実現する際には必ず求められる根本的な基礎機能を紹介する。
著者紹介:
リンクス 代表取締役 村上 慶(むらかみ けい)
1996年4月、筑波大学入学後、在学中の1999年4月、オーストラリアのウロンゴン(Wollongong)大学に国費留学、工学部にてコンピュータサイエンスを学ぶ。2001年3月、筑波大学第三学群工学システム学類を卒業後、同年4月、リンクスに入社。主に自動車、航空宇宙の分野における高速フィードバック制御の開発支援ツールであるdSPACE社製品の国内普及に従事し、国内におけるトップシェア製品となる。2003年、同社取締役、2005年7月、同社代表取締役に就任。
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