5分で分かる産業分野向けIoT「IIoT」とは:5分で分かるIoT時代の製造ITツール(6)(1/2 ページ)
IoT時代を迎えて製造業のためのITツールもその役割を変えつつある。本連載では、製造ITツールのカテゴリーごとに焦点を当て、今までの役割に対して、これからの役割がどうなっていくかを解説する。最終回の第6回は産業分野向けIoTである「IIoT」だ。
こんにちは。前回は、製造実行システム(MES:Manufacturing Execution System)について紹介しました。今回はいよいよ最終回ということで、産業分野向けIoT(IIoT:Industrial Internet of Things)について述べたいと思います。
モノ/コトをネットワークでつなぎ、データ収集/分析(アナリティクス)や自動操作などによって新たな価値を創出するコンセプトがIoT(モノのインターネット)です。その名が示す通り、製品、センサー、生産設備などが無線/有線でネットワークがつながっていることが前提となります。中でも、産業分野向けのIoTである「IIoT」は、製造業、物流、石油、ガス、輸送など幾つもの業界で活用されています。
産業分野向けのネットワークの特性(特にオフィス向けネットワークと比較した観点において)には、以下のようなものが挙げられます。
- 稼働時間(常時稼働を原則とする)
- アクセスレベルの詳細な制御
- 旧来の固有のプロトコル。最近はオープン化の流れで相互互換性が高まっている
- 産業システムが必要とする帯域幅の確保や低遅延/冗長性の提供などによる通信サービス品質の保持
これらのような特性がありながらも、オフィス向けネットワークとの統合により、IIoTはさらなる発展を遂げようとしています(図1)。
IIoTは「ビジネス成果を根本的に変革するため、高度なデータ分析を使用してインテリジェントな産業活動を可能にする設備機械、コンピューティングシステム、それらに携わる人々」と位置付けられます。その端緒としては、情報技術(IT:Information Technology)と、製造/フィールドのオペレーション技術(OT:Operation Technology)の融合による、生産の効率化、自動化、設備保守の最適化がありました。これがより進化するにつれ、インテリジェント/柔軟な製造手法、また従来の製品提供型からオンデマンドサービスへのビジネスモデル移行を実現するようになっています。
ここからは主要な産業別にIIoTの現状を見ていきましょう。
2016年における製造業のIoT支出総額1780億米ドル(約19兆7000億円)のうち、オペレーション領域が1025億ドル(約11兆3400億円)を占めています。その他の主なユースケースは、設備などの資産管理と保守(自社製造設備の故障予知)、フィールドサービス(遠隔監視と顧客サイトに据え付けられている製品の予防保全)などになります(図2)。
輸送・物流業界のIoT支出は780億米ドル(約8兆6300億円)に達しており、2020年まで年平均成長率30%で急速に拡大すると予測されています。現在の主な用途は貨物輸送監視(Freight Management)で559億米ドル(約6兆1800億円)の規模です。今後、デジタルサプライチェーンと物流システム連携が急速に進むと見込まれています。サプライチェーン全体では、現状まだ電子メールやFAX、個別の電子作業指示書によって情報共有がなされており、これをデジタル化し連携することでサプライチェーンを変革できれば、経営上の迅速な意思決定が可能となります。
さらには、物流における4つの主要なシステム(情報セキュリティ、通信、サプライチェーン監視システム、車両・輸送追跡システム)をデジタル化することで、サプライチェーン(購買先、輸送経路)の自律的な意思決定が実現されます。
エネルギー領域(石油、ガス、電力スマートグリッド)もIIoTの重要な構成要素です。エネルギー企業のIIoTへの投資は2016年で690億ドル(約7兆6400億円)に達していますが、中でもガスが突出しており578億米ドル(約6兆3900億円)となっています。
電力/ガス配送網は多くのバリューチェーンの構成要素からなり、都市構造を含む巨大なエコシステム内に存在します。IIoTにより家庭、店舗や企業と直接つながり、自家発電量や個別の電力消費量を詳細に把握することで、送電量を調節するなどの一括制御が可能になります。また、エネルギーの地産地消を促進することで送電時の電力ロスを軽減するようなエネルギー供給の変革には、デジタル化とIIoTが重要な役割を果たします(図3)。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.