検索
連載

5分で分かるIoT時代のMESとは5分で分かるIoT時代の製造ITツール(5)(1/2 ページ)

IoT時代を迎えて製造業のためのITツールもその役割を変えつつある。本連載では、製造ITツールのカテゴリーごとに焦点を当て、今までの役割に対して、これからの役割がどうなっていくかを解説する。第5回はMESだ。

Share
Tweet
LINE
Hatena

 こんにちは。前回は設計/製造エンジニアリングの基盤となるPLMについて紹介してまいりました。今回は製造実行システム(MES:Manufacturing Execution System)について紹介していきます。

これまでのMES

 PLMは製品ライフサイクル全体をカバーするものですが、ではPLMとMESは何が違うのでしょうか。PLMは、「何を作るか」「どのような設備/工程で作るか」を司り、基幹業務システムであるERPが生産計画を行います。しかし、実際に生産現場を動かすためには、製造設備や検査機器とシステム的にリンクし、作業実施を監視/管理する仕組みが必要となります。一般的に製造業の管理層は以下の3層に分けられます(図1)。

図1
図1 製造業の3つの管理層

 なぜ「計画(管理)」と「実行(工場)」の2層ではなく3層になるかというと、工場の中にも、工場の管理者と、ショップフロア(作業現場)の実行責任者がおり、その2者の間で、同様に計画指示と実行報告がなされるためです。上の3層と、個々に対応するシステム名を併記すると図2のようになります。

図2
図2 製造業の3つの管理層と対応するシステム名

 第2層に当たる工場管理者のためのツールがMESとなります。MESが担う具体的な役割は、一般的にMESA modelとして定義されています(表1)。

1 Operations/Detailed Scheduling 作業スケジューリング 生産計画に基づき、詳細なスケジュールを策定する機能
2 Resource Allocation and Status 生産資源の配分と監視 設備や人などの生産資源を配分、予約、監視、管理する機能
3 Dispatching Production Unit 作業手配・製造指示 差立て、製造指示発行、ロット管理、作業員への作業ガイダンスを出す機能
4 Performance Analysis 実績分析 過去の計画/実施と比較して、現在の生産状況を分析/レポートする機能
5 Maintenance Management 保全・保守管理 生産設備の定期保全、予防保全の計画および実行管理機能
6 Process Management 工程管理 プロセス制御、工程間制御、フィードフォワード、例外処理などの機能
7 Quality Management 品質管理 統計的品質管理、製品品質情報の収集、分析、管理の機能
8 Data Collection/Acquisition データ収集 作業報告・POPなど生産に関連するデータの収集/管理、生産進捗や状況の分析機能
9 Product Tracking and Genealogy 製品追跡と生産体系管理 仕掛り品の追跡と次工程管理機能
10 Labor Management 作業者管理 作業者の作業状況を管理して、最適な作業割当を実施する機能
11 Document Management 仕様・文書管理 作業に必要となるドキュメントや仕様、製造記録の管理機能
表1 MESの11の機能区分

 MESのコンセプトは20年以上前に提唱されたものですが、製造要件から高度な機械化が求められる石油/化学業界、半導体や液晶工場では浸透しました。ただし、一般的な製造業で見た場合、既存設備のインタフェースや工場ネットワークが課題となり、必ずしも浸透しているとはいえない状況です。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

       | 次のページへ
ページトップに戻る