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5分で分かるIoT時代のPLMとは5分で分かるIoT時代の製造ITツール(4)(1/2 ページ)

IoT時代を迎えて製造業のためのITツールもその役割を変えつつある。本連載では、製造ITツールのカテゴリーごとに焦点を当て、今までの役割に対して、これからの役割がどうなっていくかを解説する。第4回はPLMだ。

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 こんにちは。これまで、第1回のCAD第2回のCAE第3回のデジタルマニュファクチュアリング(デジタル製造)と、設計製造プロセスの各領域におけるアプリケーションを紹介してきました。今回は、データとプロセスを管理するIT基盤となるPLM(Product Lifecycle Management:製品ライフサイクル管理)を取り上げます。

これまでのPLM

 製品ライフサイクルとは、個々の製品そのものの「企画→設計→生産→販売→メンテナンス→廃棄」に着目する場合と、商品/マーケットの「上市→市場拡大→成熟→衰退」に着目する場合とがあります。ここでのPLMソフトウェアあるいはPLMプラットフォームは主に前者を扱います。

 製品ライフサイクルにおいて、図1のように会社に収入あるいは支出(コスト)がもたらされます。

図1
図1 製品ライフサイクルにおける企業の利益最大化

 PLMの概念の先駆けは、1950年代に米国国防総省によって開始された構成管理(Configuration Management)です。この構成管理は、システムのライフサイクルに適用され、システムのパフォーマンス、機能、及び物理的属性の可視性とコントロールを提供しました。また、提案された設計変更が、全体に与える悪影響を最小限に抑えるよう、体系的に検証することに役立ちました。1970年代には、構成管理に寄与する多くの標準が策定されました。それらは同時に製品品質、相互運用性にも着目していました。

 より戦略的なアプローチとしてPLMが使用されたのは、1985年アメリカン・モーターズ・コーポレーション(American Motors Corporation、略称AMC)が初めてといわれています。当時AMCは、自社よりも企業規模が大きい競合と競争するために「ジープ・グランド・チェロキー」の生産プロセスを加速する方法を模索していました。PLMを使用すると、全てのデザイン、図面、及び関連書類が、研究開発/設計/製造など関係する部門がアクセス可能な一元化されたデータベースに格納されます。これにより、設計上の課題がより迅速に解決され、またコストのかかる設計変更が削減されることが期待されました。1987年にクライスラー(Chrysler)がAMCを買収したとき、PLMを活用した開発が非常に効果的であったので、そのプロセスを維持することにしました。

 基礎技術の観点では、リレーショナルデータベースの改良とクライアント/サーバ技術の進歩により、柔軟かつ拡張性の高いシステムが可能となり、グローバルなPLMシステムの基盤構築が可能となりました。また、2000年代のWeb技術の進歩、2010年代のモバイル/クラウド/UXの発達により、PLMの複雑な情報がグラフィカルにより幅広い環境からアクセス可能となりました。

 一方、ITツールという観点では、1980年代から現存するグローバルCADベンダーがPLMの開発に注力してきました。当初はCADデータを対象としたPDM(Product Data Management:製品データ管理)が製品化され、その後に製品のライフサイクルを業務プロセスの流れや変更管理など含め一元的に管理するPLMとして進化していきました。このために、各ベンダーは2000年代から積極的に生産準備や解析ツールに強みを持つ他社との買収/統合を進め、PLMベンダーとしての地位を確立しました。

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