5分で分かるIoT時代のCAEとは:5分で分かるIoT時代の製造ITツール(2)(1/2 ページ)
IoT時代を迎えて製造業のためのITツールもその役割を変えつつある。本連載では、製造ITツールのカテゴリーごとに焦点を当て、今までの役割に対して、これからの役割がどうなっていくかを解説する。第2回はCAEだ。
製造業のためのITツールの変容を解説している本連載ですが、前回の第1回ではCADの歴史とこれからについて概説しました。今回は、製品設計時の解析やシミュレーションに広く用いられているCAE(Computer Aided Engineering)について説明したいと思います。
これまでのCAE
CAEの根本となる理論や手法は多々ありますが、適用範囲が広い強度/応力解析の分野では、連続体である弾性体(応力とひずみが比例する前提)を対象とした材料力学が基盤となります。
任意の3次元形状に対しての理論式というものは存在しないため、そのような問題には離散化等数値解析的な手法を取る必要があります。1940年代にリヒャルト・クーラント(Richard Courant)が提唱した、連続体を三角形に分割する手法が、今日もCAEで用いられる手法の原点となっています。
1960年にレイ・ウィリアム・クラフ(Ray William Clough)は「有限要素(Finite Element)」という用語を定義し、1960年初頭から有限要素法(FEA:Finite Element Method)を取り入れた商業CAEソフトウェアが販売されるようになりました。中でも有名なものがMacNeal-Schwendler Corporation(MSC)が開発した汎用FEAコードで、これが後の「MSC/Nastran」となりました。
元のNastranが一般に公開されると、現在も存在する多くの商業CAEソフトウェア(ANSYS、MARCなど)も開発されていきます。
一方、熱や流体を対象とする解析については、ナビエ・ストークス方程式が基盤となります。この方程式は、このままでは現実問題の解を得ることは困難ですが、構造格子を用いて、流体運動を時間的/空間的に離散化することで解を得ることが可能になります。1960年代から欧米で盛んに研究され、1980年頃から「PHONICS」「STAR-CD」「Fluent」などの商用ソフトウェアが販売されるようになりました。
離散化による数値解析では、求める正確度が高まるほどより詳細な分割や非線形(大変形や塑性変形など)の考慮が必要となります。昔はそのような負荷の高いコンピュータ上の計算は専用のハードウェアで実施する必要がありました。
筆者も今をさかのぼること20余年、材料系の研究室に在籍していたころ、破壊挙動の研究のために研究室で初めてCAEのハードとソフトが導入されましたが、最初に行ったのは2DのFEMモデル化でした。1990年代後半以降、エンジニアリングワークステーションからPCへのダウンサイジング、またハードウェア自身の高性能化、並列化によって、非線形など高度な解析も、専用ハードではないより一般的な環境で実現できるようになってきています。
1970年代以降、部品/製品形状を定義するソフトウェア(CAD)が発達し、CAEの元となる3Dモデルの作成/調整が容易になってきました。また近年ではCAEソフトウェア自体の使い勝手の向上やCAD/CAE統合環境の開発により、設計者が設計段階で「設計者CAE」も盛んになっています。
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