ヤマハ発動機のスマート農業基盤「YSAP」、ドローンや無人ヘリコプター活用に特化:スマートアグリ(2/2 ページ)
ヤマハ発動機と国際航業、トプコン、ウォーターセルの4社は、農業用ドローンや無人ヘリコプターによる農薬散布、施肥の作業や運航のデータを管理するヤマハ発動機のソフトウェアサービス「YSAP」の提供に向けて協業を開始すると発表した。
協業3社が果たす役割
このYSAPとドローンと無人ヘリコプターを組み合わせた運用を高度なレベルで達成するためには、農地の観測や分析、農作業全体の連携管理は重要な役割を果たす。そこで、ヤマハ発動機がYSAPの協業パートナーとしたのが、国際航業、トプコン、ウォーターセルの3社だ。
70年以上前から航空写真測量を手掛けてきた国際航業は、圃場や農場、農作物の生育状況を人工衛星やドローンから診断する営農支援サービス「天晴れ(あっぱれ)」を2017年11月から展開している。同社 営農支援サービス「天晴れ」チームリーダー 鎌形哲稔氏は「既に1500以上の生産者が利用している。水稲だけでなく、小麦、大豆、牧草にも対応している」と述べる。また、収穫後の乾燥コストを2〜4割削減する効果なども得られているという。
YSAPとの連携では、生育状況の可視化や異常箇所の検知を担い、病害虫の早期発見や追肥の判断の基礎となる情報を提供することになる。
測量システムをグローバルに展開するトプコンは、GPSなどを活用した精密農業ソリューションも展開している。YSAP向けに展開するのは、トラクター向けのレーザー式生育センサー「CropSpec」だ。同社 スマートインフラ事業本部 国内IT農業推進部 部長の吉田剛氏は「10年以上前から提供しているCropSpecは、自発光のレーザーの反射量を見ることにより、太陽光の影響を受けず定量的な計測が可能だ。絶対値を計測できるので、春から夏、秋にかけての経時変化も分かる。またリアルタイムに計測できるので、生育度に応じたリアルタイム可変施肥にも活用できる」と説明する。
なお、CropSpecはトラクター用のセンサーだが、現行品でもYMR-08や無人ヘリコプターには十分搭載可能な重量とサイズである。実証実験を経て、専用モデルを用意することも検討している。
2011年創業のウォーターセルは、農業経営管理ツール「agri-note(アグリノート)」を展開している。発行アカウント数は1万以上と多くの農家に用いられている。同社 代表取締役の長井啓友氏は「新潟で創業したベンチャー企業ということもあり、農業の現場に役立つことを目指して、さまざまな農業情報プラットフォームとつなげられるオープン戦略で展開してきたのがアグリノートだ。今回の実証実験の中で、防除や追肥の計画、実績を見える化できるようにしていきたい」と強調する。
またアグリノートは、既に井関農機、三菱マヒンドラ農機とも連携しており、YSAPとの連携によりさらに管理できる農業情報の範囲が広がることになる。
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