ヤマハ発動機が新横浜に研究開発拠点、ロボティクスとITの先進技術人材を獲得へ:製造マネジメントニュース
ヤマハ発動機は2018年5月30日、横浜市内に新たな研究開発拠点「ヤマハモーターアドバンストテクノロジーセンター(横浜)」を開設すると発表した。ソフトウェアを中心としたロボティクス、知能化、IT領域の先進技術開発、高度人材の獲得と育成、オープンイノベーションの推進を目的としている。
ヤマハ発動機は2018年5月30日、東京都内で会見を開き、横浜市内に新たな研究開発拠点「ヤマハモーターアドバンストテクノロジーセンター(横浜)」を開設すると発表した。ソフトウェアを中心としたロボティクス、知能化、IT領域の先進技術開発、高度人材の獲得と育成、オープンイノベーションの推進を目的としており、人員数は2018年内で約15人、2021年内で約50人を目指す。開設予定日は2018年6月14日。投資金額は非公開としている。
同社は2018年1月に大規模な組織変更を実施しており、その中で新規事業企画機能と先進技術開発機能を融合した「先進技術本部」が発足。表面実装機や産業用ロボットを扱う「IM事業部」は、無人ヘリコプターや産業用ドローンを扱うUMS事業を傘下に加えて「ロボティクス事業部」に改称している。今回開設する研究開発拠点の人員は、先進技術本部でデジタル活用の推進やガバナンスを担う「デジタル戦略部」と、ロボティクス事業部の先行開発部に所属することになる。人員構成はデジタル戦略部とロボティクス事業部の先行開発部で半々になる見込み。なお、センター長は、ロボティクス事業部 先行開発部所属の小林一裕氏が就任する。
同社 フェロー 企画・財務本部 先進技術本部の平野浩介氏は「ロボティクス、知能化、ITといった先進技術領域の日本の人材は首都圏に6割が集中しているといわれる。当社の主力事業は、二輪車やマリンだが、現時点で最も成長著しいのがロボティクス事業だ。そのロボティクス事業の成長を加速する人材獲得を進めるためにも、首都圏に新たな研究開発拠点が必要になると考えていた」と語る。
平野氏が担当するデジタル戦略部では、デジタル革新を加速するために「データ」と「つながる」という2つのキーワードを基に、「会社」「製品」「顧客」という3つの注力分野に展開していく方針だ。「会社であれば、工場での生産や経営にデジタル技術を積極的に導入するし、製品であれば2030年までに当社製品を全てコネクテッドにする。顧客であれば、二輪車で500万台、マリンで100万台を年間で出荷しており、5年間継続利用していただけるとして3000万人の顧客基盤があるわけで、その顧客基盤とつながることで製品やサービスを強化していける」(平野氏)という。
横浜の研究開発拠点では、デジタル戦略部の4つの重点テーマのうち、データ分析基盤と、デジタルマーケティングの一部機能を担うことになる。
同社 ソリューション事業本部 ロボティクス事業部 先行開発部長 兼 先行開発グループ グループリーダーの中村亮介氏は「2018年からUMS事業を統合したロボティクス事業部では、広い範囲のロボティクスをカバーしていくことになる。当面の事業としては、表面実装機や産業用ロボットなど工場内が中核だが、いくいくは工場の外にも展開したい。そのためにも、新拠点ではロボティクス関連の優秀な人材を獲得していきたい」と強調する。
なお新拠点の人材募集は、ロボティクス分野の先行技術開発、データベースエンジニア、データサイエンティスト、デジタルマーケティングの4分野で行う。さらに、データサイエンティストについては2018年7月から教育プログラムを立ち上げて、社内人材を育成する場としても活用する。
「ヤマハ発動機という企業の特徴に共感してもらえる人材を採用」
ここ数年で、中京〜東海地区に本社を置く製造業が東京に大規模な研究開発拠点を開設する事例が増えている。例えば、トヨタ自動車は、自動運転技術の先行開発分野での技術開発を促進する新会社「Toyota Research Institute Advanced Development(TRI-AD)」の設立を発表しており1000人規模の体制を作る方針を示している※)。
※)関連記事:トヨタデンソーアイシンが都内で自動運転開発を加速「従来と異なる発想で」
平野氏は「人材獲得競争は厳しいかもしれないが、ヤマハ発動機という企業の特徴に共感してもらえる人材を採用していきたい。新拠点のロケーションは、本社拠点のある浜松や磐田とのアクセスの良さ、経済性も考慮して新横浜駅近くを選んだ。今後拠点を拡充していく中で、都心への移転などを含めてさまざまな方策を検討していきたい」と述べている。
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