トヨタデンソーアイシンが都内で自動運転開発を加速「従来と異なる発想で」:製造マネジメントニュース
トヨタ自動車は、自動運転技術の先行開発分野での技術開発を促進するため、2018年3月下旬までに新会社「TRI-AD」を東京に設立する。デンソー、アイシングループもTRI-ADに出資/投資し、人員の派遣も行う。設立時の従業員数は3社合わせて300人で、今後は新規採用を含めて1000人規模の体制を作る。
トヨタ自動車は2018年3月2日、自動運転技術の先行開発分野での技術開発を促進するため、同年3月下旬までに新会社「Toyota Research Institute Advanced Development(TRI-AD)」を東京に設立すると発表した。トヨタ自動車だけでなく、デンソー、アイシングループ(以下、アイシン)もTRI-ADに出資/投資し、人員の派遣も行う。設立時の従業員数は3社合わせて300人で、今後は新規採用を含めて1000人規模の体制を作る。
TRI-ADの出資金額は5000万円で、出資比率はトヨタ自動車が90%、デンソーとアイシンが5%ずつ。代表取締役CEOには、AI(人工知能)などの研究開発を行うトヨタ自動車の米国子会社Toyota Research Institute(TRI)のCTOを務めるジェームス・カフナー(James Kuffner)氏が就任する。カフナー氏は、グーグル(Google)のロボティクス部門長を務めていたことでも知られる。もう1人の代表取締役には、トヨタ自動車の常務役員で先進技術開発カンパニー Executive Vice Presidentを務める奥地弘章氏が就く。取締役は、TRI CEOのギル・プラット(Gill A. Pratt)氏、トヨタ自動車の常務理事で先進技術開発カンパニーの自動運転、AI/ビッグデータ分野を担当する鯉渕健氏が務める。
所在地はトヨタ自動車の東京本社内に置くが、実際の活動拠点は「アクセスや採用面で魅力のある新たなロケーションを選定している」(ニュースリリースより)という。また、英語を社内公用語にすることも含め、仕事の進め方や社内ルールなども全く新たに構築し、次の世代の1つのモデルケースとすることを目指す。
3社で開発投資、総額は3000億円以上
トヨタ自動車は「100年に一度の変革期」という環境変化に対応すべく、2016年にTRIを設立し、AI、自動運転、ロボティクスといった技術の研究を行ってきた。新会社のTRI-ADでは、TRIの成果を基にさらなる競争力強化を目指すことになる。
TRI-ADの目標は4つある。1つ目は「研究から開発まで一気通貫のソフトウェア開発の実現、及びデータハンドリング技術の強化」。2つ目は「TRIとの連携を強化し、その研究成果を先行開発、そして製品へと効率良くつなぐ」。3つ目は「研究、先行開発領域における、トヨタグループ内での開発の連携強化による開発のスピードアップ」。そして4つ目は「国内外トップ人材採用により開発力を強化しつつ、トヨタグループ内の知能化人材を育成」となっている。
これらの目標を実現するために「従来とは異なる発想で新たなスキームを構築することが必要と考え」(ニュースリリースより)、TRI-ADの設立に併せて、トヨタ自動車とデンソー、アイシンの3社で、自動運転技術の先行開発分野における共同技術開発に向けた覚書を締結した。
TRI-ADには3社とも出資しているが、開発投資も共同で実施することを予定している。総投資金額は3000億円以上を想定。今後3社は、具体的な共同開発契約の締結を目指して、さらに協議を進めていくという。
TRI-ADのCEOに就任するジェームス・カフナー氏は「製品として高品質なソフトウェアを作りあげていくことは、トヨタ自動車の自動運転開発において大変重要な取り組みだ。新会社のミッションは、世界トップクラスの人材を新たに採用することも含め、トヨタグループの技術力を強化することで、より効率的に、そして今までにない方法で、ソフトウェア開発を加速させていくことである。新規採用はグローバルに行う」と述べている。
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