ソニーの3Q決算は“実質”減収減益も、2020年代見据えた攻めの布石:製造マネジメントニュース(2/2 ページ)
ソニーは2019年3月期(2018年度)第3四半期の決算を発表。第3四半期(単独)の業績は、売上高は前年同期比10%減の2兆4018億円、営業利益は同7%増の3770億円、税引前利益は同1%減の3405億円、四半期純利益は同45%増の4290億円と減収増益となった。
5Gや自動運転に向け着々と布石を打つソニー
以前から課題になっていた上、ハイエンドスマートフォン端末市場の低迷、米中貿易摩擦など、マイナス要因が重なるモバイルコミュニケーション事業だが「現在の赤字は2018年10月時点での予想通りとなっており、2020年度までに損益均衡させるという計画は変わりない。そのためにそれまでにオペレーションコストの50%削減を目指す。現状でもその通り進んでいる」と十時氏は構造改革の進捗状況について述べている。
スマートフォン端末事業は現状だけを見ると、大きくシェアを伸ばすことは難しく、縮小均衡による黒字化が現実的な目標となっており、撤退してもおかしくない状況ではあるが、事業撤退に対しては「現状は考えていない。従来通りの方針だ」(十時氏)としている。
ソニーでは、スマートフォン端末事業について「5Gの時代になれば、スマートフォンが人やモノの、データやコンテンツを結び付ける重要なハードウェアとなる。通信のテクノロジーをプラットフォームとして維持し、技術をつないでいくためにも社内で持ち続けていかなければならない。そのために苦しくてもスマートフォン端末事業は続けていく」という考えを示しており、5Gをターゲットにして、5G以降の市場で巻き返しを図る狙いである。
半導体事業については、スマートフォン端末向けのイメージセンサーの販売数量が減少しており減収減益となった。今後もスマートフォン市場の環境が悪化が進んでいるため、通期についてもイメージセンサーの販売数量見通しを引き下げている。
ただ一方で「市場環境はしばらく厳しい状況が続くと見ているが、ハイエンドのイメージセンサーが中価格帯機にも入る動き出ている。加えて、カメラの多眼化やイメージセンサーの大型化などが進んでおり、イメージセンサービジネスとしては好転する動きが出てきている」と十時氏はポジティブな見方を示している。
一方で、スマートフォン端末向け以外でのイメージセンサー販売の拡大にもさまざまな取り組みを進めている。その1つが自動運転などの車載向けイメージセンサーの領域である※)。
※)関連記事:ついに芽が出たソニーの車載用イメージセンサー、花は咲くのか
「車載用イメージセンサーは自動運転のレベル3、4に達する2020年代にナンバーワンとなることを目指して取り組みを進めている。そのために自動運転領域のキープレーヤーとの連携を強化する。具体的にはモービルアイ(Mobileye)と協業し、自動運転システムとしての提案を自動車メーカーやティア1サプライヤーに提案しているところだ」と十時氏は話している※)。
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