KYBが新たな不適切検査を発表、「原点調整」で検査データ改ざん:製造マネジメントニュース
KYBは2018年12月19日、免震・制振用オイルダンパーの検査工程で新たに発覚した不適切行為の調査結果を公表した。今回明らかとなった新たな不適切行為は、同社で最初に発覚した「検査データの係数書き換え」とは異なる手法である「原点調整」で検査データの改ざんを行っていた。
KYBは2018年12月19日、免震・制振用オイルダンパーの検査工程で新たに発覚した不適切行為の調査結果を公表した。今回明らかとなった新たな不適切行為は、同社で最初に発覚した「検査データの係数書き換え」とは異なる手法である「原点調整」で検査データの改ざんを行っていた。
原点調整が新たに発覚したことにより、大臣認定もしくは顧客契約基準に不適合な製品数が増加した。同社が同年11月30日に公表した製品数と比較して、大臣認定に不適合な免震用オイルダンパーは273本増の774本、顧客契約基準に不適合な免震用オイルダンパーは808本増の2720本、顧客契約基準に不適合な制振用オイルダンパーは52本増の195本となる。また、適合不明の製品数も増加した。
「原点調整」の手口とは
原点調整による検査データの改ざんは、オイルダンパーの加振試験で得られた減衰力検査値の中央値を原点へ移動させることで行われた。これにより、検査データの数値全体を一定値で増減させることができる。
これまでに発覚している係数書き換えは、加振試験で得られた検査データの数値全体に任意の係数を掛けることで値を改ざんする。係数が1より小の場合は、変位に対する減衰力が大きく見え、係数が1より大の場合には減衰力が小さく見える。
ここで、原点調整による検査データの改ざんは、以下の動機によって行われた。
- 検査データが基準内に入っている製品をより基準内に近づけるため
- 検査データが基準内に入っていない製品を基準内に入れるため
- 検査データが基準内に入っていない製品を先に係数書き換えしたが、改ざん値が基準内に入らなかったので改ざん値をさらに調整するため
3点目について、係数書き換え行為は検査データの数値全体に作用するため、基準に逸脱した検査値を基準内に入れるとともに、本来であれば基準内の検査値を基準外へ逸脱させることもある。この場合に原点調整が加えて行われた。
「原点調整」が発覚した経緯
原点調整が新たに発覚する発端となったのは、KYBの一連の不適切検査事案を調査する外部調査委員会だった。同委員会の調査により、同社子会社のカヤバシステムマシナリー従業員に対して係数書き換え以外の行為で検査データの改ざんを行ったと疑いが生じた。これを受けて、KYBは2018年11月2日に品質担当役員を派遣し、関係者の聴取と検査機器やデータの調査を開始している。
その後、検査機器のプログラム解析と検査データ改ざんの疑いがある製品の検査データ検証により、同年11月12日に原点調整を行っていた事実が発覚した。同月14日に国土交通省へ事実関係を報告し、15日に第1報を公表。その後、「追加事象の調査に時間を要した」とし、12月19日に調査結果の公表を行った。
2019年3月期業績予想を修正、営業利益も赤字転落へ
KYBは同日、2019年3月期(2018年4月〜2019年3月)業績予想の修正を発表した。2018年11月6日に発表した業績予想から、営業損益が25億円減となる18億円の赤字、連結最終損益が19億円減となる42億円の赤字と、損失が拡大する見込みを立てている。
新たに発覚した同事案によって製品保証引当金の繰入対象であった製品数が変更となったことに伴い、25億円の製品保証引当金を第3四半期に追加計上する見通しとなったことによる。
同社は2018年12月20日、2019年1月1日付で組織改革を実行し、社長直下組織として「免制振対策本部」を新設すると発表した。同本部の傘下に「統轄管理部」「技術管理部」「お客様対応統轄部」を設けるとしている。
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