アジア拠点でハイクラス人材を採用できない日本企業、現地向け人事制度が課題:製造マネジメントニュース(2/2 ページ)
日本能率協会コンサルティングは、アジアの現地法人におけるHR機能の調査「アジア日系企業における人材マネジメント実態調査」を発表。日系企業の現地法人における中国、タイ、ベトナム3カ国の人材マネジメントそれぞれの状況と、比較を行った。
タイで進む人材育成の仕組み
研修などの人材育成の現状については、約7割が研修などを実施しており、各地域ともに熱心だ。ただ「体系的な教育制度を整備している」としているのは2割前後にとどまっており、その多くが事後対処を中心として行われているケースがほとんどだという。「品質問題があったタイミングで品質研修を行ったり、安全問題が起こったときに安全研修を行ったり、何らかのトラブルに対して対症療法的に行うケースがほとんどだ」(富永氏)としている。
一方で、研修の実施形式については、タイでは「外部講師による社内研修」(70%)「外部公開研修に参加」(89%)とするなど、教育や研修の環境が進んでいることが分かる。その一方でベトナムについては「外部講師で社内研修」(32%)「外部公開研修に参加」(34%)となるなど、外部の人材育成の仕組みに頼れないことから「社内講師による研修」(50%)に頼る現状が明らかになっている。
人材の現地化はベトナムが先行
「人材の現地化」に対する必要性を感じている企業は約7割だが、特にタイでは「あまり進んでいないので早急に進めたい」(54%)「比較的進んでいるがさらに進めたい」(37%)で合わせると9割以上となっており、強い要望があることが分かる。社長や役員、管理者の日本人比率を見ても、タイは69%と中国やベトナムに比べて特に高く、現地化が遅れている状況が見える。一方で、ベトナムは現地派遣が困難なこともあって現地化率が58%と最も高い結果となっている。「タイは自動車産業などを中心に比較的日本人が多く派遣されている現状がある。一方でベトナムは最近進出が進んだことから、できる限り現地に任せようという流れががある」と富永氏はタイとベトナムの違いについて語る。
中国では社内使用言語は日本語が多い
現地法人内で使われる言語については、タイやベトナムでは英語中心であるのに対し、中国では日本語中心(60%)であるということが分かった。一方で中国では英語の使用が極端に少ない(2%)という状況がある。タイやベトナムでは日本語、現地語、英語のバランスがほぼ同等となっており「それぞれでどの言語でどういうコミュニケーションをすべきかという形がまだ定まっていない面がある」(富永氏)としている。
日本企業が取り組むべき方向性
これらの調査結果を受け富永氏は「現地に適した成果重視の人事制度を確立し、現地人材育成を強化する点は急務だ」と述べる。「現地人材は基本的には業務成果が報酬に直結する仕組みを求めており、年功制度などの成果に対する報酬が不明確な体制は喜ばれない。現地のニーズに合った体制を作るべきだ」と富永氏は訴えている。
ただ一方で「年功制度などの根底になる『人を育てる文化』などは日本企業の良さとして受け入れられる面もある。うまく発信して強みとする動きも出ている。成果制度とこれらをうまく組み合わせて独自性を発揮できる仕組みを作ることが求められている」と富永氏は語っている。
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