アジア拠点でハイクラス人材を採用できない日本企業、現地向け人事制度が課題:製造マネジメントニュース(1/2 ページ)
日本能率協会コンサルティングは、アジアの現地法人におけるHR機能の調査「アジア日系企業における人材マネジメント実態調査」を発表。日系企業の現地法人における中国、タイ、ベトナム3カ国の人材マネジメントそれぞれの状況と、比較を行った。
日本能率協会コンサルティング(JMAC)は2018年12月17日、アジアの現地法人におけるHR(Human Relations)機能の調査「アジア日系企業における人材マネジメント実態調査」を発表。日系企業の現地法人における中国、タイ、ベトナム3カ国の人材マネジメントそれぞれの状況と、比較を行った。
日本の製造業は海外進出を加速しているが、その中でも中心となっているのがアジア地域である。JMAC 取締役 経営企画室長 富永峰郎氏は「日本企業の海外拠点は世界に9万拠点があるとされているが、7万拠点がアジア地域にある。その内中国に3万〜3万数千拠点、東南アジアに2万〜3万拠点が存在する」とアジアへの日本企業の進出状況について語る。
こうした状況の中でJMACにも現地人材の活用についての相談が増えてきたことから、今回調査を行ったという。調査は日系企業の現地法人に対するインターネット調査で行い、調査期間は2018年9月上旬〜10月上旬。回答企業数は中国が167社、タイが50社、ベトナムが115社で、合計332社となっている。
人材マネジメントにおける課題感
「人材マネジメントの課題」という質問に対して「現在の課題」として高い比率を示したのが「現地に適した人事制度の設計・再構築」(43%)と「現地管理者および候補者の人材育成と研修」(41%)である。ただ、「3年後の課題」としては「現地管理者および候補者の人材育成と研修」については変わらず高かった(37%)ものの、一方で「現地に適した人事制度の設計・再構築」についての回答比率は29%に低下。代わりに「総人件費の管理と労働生産性の向上」が37%と高い比率を示した。
年功序列ベースの人事制度が持つ課題
これらの海外現地法人での人事制度の運用実態については、「これまでは年功要素を重視しており、今後も変えるつもりはない」(6%)、「これまでは年功要素を重視してきたが今後は成果を重視したい」(30%)、「現状は成果を重視することになっているが実際は年功的な運用になっている」(34%)とするなど、70%がまだ「年功」ベースの人事制度の運用となっている現状が分かる。
さらに、現行人事制度の問題については「昇格ルールが制度化されていない」(57%)、「社員のパフォーマンスを測る評価の仕組みがない」(48%)、「研修などの教育体系が整備されていない」(48%)など、明確化されていない領域が多いことが主な課題とされている。
海外でも人手不足が指摘される最近状況だが、富永氏は「実際にこれらの課題が原因となり、ハイクラスの人材については、欧米や韓国などの企業に競り負けて、採用できなくなるケースも多い。ただ、ミドルクラス以下については年功ベースでもそれほど気にしないという場合が多いようだ」と採用状況について述べる。
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