IoT機器を環境発電で動かせるマイコン、ルネサスがSOTB技術で実現:組み込み開発ニュース
ルネサス エレクトロニクスは、IoT(モノのインターネット)などに用いられる組み込み機器において、電池の使用や交換が不要な環境発電(エナジーハーベスティング)による動作を可能にするマイコン「R7F0E」を開発したと発表した。
ルネサス エレクトロニクスは2018年11月14日、IoT(モノのインターネット)などに用いられる組み込み機器において、電池の使用や交換が不要な環境発電(エナジーハーベスティング)による動作を可能にするマイコン「R7F0E」を開発したと発表した。既に先行顧客向けに提供を開始しており、今後はスマートウォッチ、ウェアラブル機器、フィットネスウェアや靴など、民生からヘルスケア、工場や住宅、農業、公共インフラ分野など幅広い応用分野に向けて展開する方針。2019年7月から一般顧客への提供を順次開始し、同年10月から量産を始める計画だ。
R7F0Eの最大の特徴は、ルネサス独自の半導体プロセス技術「SOTB(Silicon On Thin Buried Oxide)」を採用したことだ。従来のマイコンでは難しかった、低アクティブ電流と低スタンバイ電流の両立を実現しており、極めて低電流で動作する。光や振動、流量などを用いた微小な環境発電による電流でも動作するので、電源を供給するための電池を使用することなくIoT機器を開発できるという。
R7F0Eは、プロセッサコアにArmの「Cortex-M0+」を採用しており、最大動作周波数は64MHz。センサーデータなどをIoTの枠組みにおけるエンドポイントで高速に処理したり、複雑な解析や制御機能を実現する性能を有している。3.0V動作時のアクティブ電流は20μA/MHz、ディープスタンバイ電流は150nA、ソフトウェアスタンバイ電流は400nAで、従来の低電力とされるマイコンの約10分の1の消費電力となっている。
この他、環境発電機器を効率的かつコスト効率良く開発できるよう、独自に設定できる環境発電コントローラー(EHC)を内蔵している。これにより外付け部品を削減可能となり、シンプルなシステム構成による堅牢性の向上も期待できる。また、太陽光や振動、圧電素子などのさまざまな種類の発電素子に、電圧安定化回路なしで直接接続できるので、環境発電システムで問題となる起動時の突入電流に起因する誤動作を防げる。加えて、EHCは、コンデンサーや二次電池のような外付けの蓄電デバイスを管理する機能も備えている。
一方、環境発電機器の開発にとどまらない低消費電力の機器の設計にも対応可能な機能も備えている。例えば、外部変化を見逃さないために14ビットA/Dコンバーターを起動していても、3μAという極めて小さい電流での動作が可能であり、1nA/KBの消費電流で256KBのSRAMデータを保持することもできる。画像データを保持するのに実質的に電力が不要なMIP(メモリインピクセル)LCDにも接続可能で、グラフィックデータを回転、拡大、反転できる低電力回路を内蔵しているため表示機能が必要な機器にも対応できる。
今後はRF回路や組み込みAIを集積へ
SOTBは、従来トレードオフの関係にあった、アクティブ時の消費電力とスタンバイ時の消費電力を両方削減できる、ルネサス独自のプロセス技術だ。ウェハー基板上の薄いシリコン層の下に、極めて薄い絶縁層(BOX:Buried Oxide)を形成し、シリコン層に不純物を混入しないことにより低電圧で安定した動作を可能にしており、電力効率良く演算性能を発揮できる。その一方で、スタンバイ時はBOX層下のシリコン基板電位を制御(バックバイアス制御)することにより、リーク電流を削減し、待機電力を抑えられるとしている。
なお、ルネサスはSOTB技術を用いたマイコンの今後の製品展開として、2020〜2021年にBluetooth Low Energy(BLE)などのRF回路の集積、2022〜2023年にはRFに加えて組み込みAI(人工知能)技術「e-AI」の集積を検討している。
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