ルネサスが半導体IPのライセンスを拡販、「RX」や「SH」をFPGAに組み込める:組み込み開発ニュース
ルネサス エレクトロニクスは、半導体の設計情報であるIP(Intellectual Property)のライセンス販売を拡大する。従来は特定の大口顧客が要望する際のみに提供していたが、年率10%以上で成長しているIPライセンス市場に参入する。
ルネサス エレクトロニクスは2018年9月20日、半導体の設計情報であるIP(Intellectual Property)のライセンス販売を拡大すると発表した。従来は、特定の大口顧客の要望に応じるときだけ提供していたが、年率10%以上で成長している半導体IPライセンス市場に参入する。2025年に同市場は1兆円に達するといわれており、ルネサスは2025年にIPライセンス事業で100億円の売り上げを目指す。
ルネサスは、マイコンやSoC(System on Chip)などに搭載するためのIPとして、単体のCPUコアや周辺IPに加え、IPを接続するバス制御、割込制御のサブシステムなどを多数保有している。「これらのIPは、設計から製造まで行っている半導体メーカーならではの、高い信頼性と品質を誇る」(同社)という。今回は第1弾として、「RX」「SH」などのCPUコア、モーター用タイマーIP、USBコア、SRAMなど40種類以上のIPライセンスの提供を始める。また、半導体メーカーならではの知見を生かしたテクニカルサポートも開始する。
ルネサスがIPライセンス販売の対象とする顧客は、セットメーカーなど半導体製品のユーザーだけでなく、競合となり得るファブレス半導体企業や半導体メーカー、ファウンドリなど幅広く想定している。
ルネサスのIPを活用することで、AI(人工知能)用や自動運転車用、ロボット用などのカスタムLSIを開発したいユーザーは、自社では競争力のあるIPのみを開発して半導体の開発期間を短縮できる。FPGAによる先行開発を行うユーザーであれば、ルネサスのIPを使ってソフトウェアの早期開発や先行評価を行える。さらに、低価格化の進むFPGAを使ってそのまま量産をスタートすることも可能だ。
一方、過去のソフトウェア資産を生かし続けたいと考えるユーザーにとっても、ルネサスのIPを継続して利用できるので、ソフトウェアやボードの開発、検証、評価の工数を削減し、効率的なシステム開発を行えるとしている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- ルネサスが7330億円でIDTを買収「決して高くない」
ルネサス エレクトロニクスは2018年9月11日、東京都内で記者会見を開き、米国の中堅半導体メーカーであるIntegrated Device Technology(以下、IDT)を買収する最終契約を締結したと発表した。買収額は67億ドル(約7330億円)で2019年上期中の買収完了を予定している。新株発行を伴う資金調達は行わず、手元資金と主要取引銀行からの借り入れでまかなった。 - ルネサスの「e-AI」が切り開く組み込みAIの未来、電池レス動作も可能に
ルネサス エレクトロニクスは、安価なマイコンにもAIを組み込める技術「e-AI」を発表した。同社 執行役員常務 兼 第二ソリューション事業本部本部長の横田善和氏に、e-AI投入の狙い、製品開発に適用する次世代技術などについて聞いた。 - ルネサスの組み込みAIの性能は10倍×10倍×10倍で1000倍へ「推論に加え学習も」
ルネサス エレクトロニクスは、汎用事業の成長ドライバーに位置付ける組み込みAI(人工知能)技術「e-AI」をさらに強化する。現在のMCU/MPUを用いた組み込みAIによる推論モデルの処理性能を、2018年夏に10倍、2019年末にさらに10倍、2021年にさらに10倍にして1000倍を目指すという。 - 「世界初」で「世界最高性能」、ルネサスが28nm車載マイコンをサンプル出荷
ルネサス エレクトロニクスは、28nmプロセスを採用したフラッシュメモリ内蔵車載マイコン「RH850/E2xシリーズ」のサンプル出荷を開始した。28nmプロセス採用のフラッシュメモリ内蔵マイコンのサンプル出荷は「世界初」(ルネサス)、フラッシュメモリ内蔵車載マイコンの処理性能としても「世界最高」(同社)だという。 - デンソーがルネサスの株式保有比率を5%に引き上げ、産革機構は50%未満に
デンソーは、産業革新機構からルネサス エレクトロニクスの株式を買い取り、同社の株式保有比率を現在の0.5%から5%に引き上げる。 - トヨタが2020年に実用化する高速道路自動運転、ルネサスのマイコンとSoCを採用
ルネサス エレクトロニクスは、トヨタ自動車が2020年の実用化を目指す高速道路向け自動運転システムに、車載コンピューティングプラットフォームのSoC(System on Chip)「R-Car H3」と車両制御用マイコン「RH850」が採用されると発表した。デンソーが開発するECU向けに供給する。