ルネサスの組み込みAIの性能が10倍に、独自開発の「DRP」で実現:人工知能ニュース
ルネサス エレクトロニクスは、同社の組み込みAIソリューション「e-AI」における画像処理性能を従来比で10倍に向上できるマイクロプロセッサ「RZ/A2M」を開発した。最大の特徴は、独自に開発した動的に再構成が可能なプロセッサ技術「DRP」の採用になる。
ルネサス エレクトロニクスは2018年10月4日、同社の組み込みAI(人工知能)ソリューション「e-AI」における画像処理性能を従来比で10倍に向上できるマイクロプロセッサ「RZ/A2M」を開発したと発表した。同日からサンプル出荷を開始している。RZ/A2Mの機能を試すための開発ボードや各種レファレンスソフトウェアなども併せて提供する。2019年1〜3月期に量産を始め、2021年に月産40万個を計画している。
RZ/A2Mの最大の特徴は、独自に開発した動的に再構成が可能なプロセッサ技術「DRP(Dynamically Reconfigurable Processor)」を採用したことだ。DRPは、1クロックごとに、演算回路の構成を動的に変更できる技術であり、機械学習や深層学習から得られた推論実行エンジンに用いられているCNN(畳み込みニューラルネットワーク)などの演算処理に用いれば、動作周波数当たりの消費電力を大幅に抑えられる。
ルネサスはこれまで、放送用機器やデジタルカメラなど特定顧客向けにDRPを提供してきた。RZ/A2MのDRPは、組み込みAI向けに機能を拡張しており、グレースケール色変換、画像加工、輪郭抽出、物体の切り取りなどのプロセスから構成される入力画像の前処理を高速に行える。「従来比で10倍の画像処理性能」とは、CPUで前処理を行っていた従来品の「RZ/A1」と比べて、DRPを用いることにより前処理の性能が10倍になったことを意味する。
DRPは、ルネサスが提供するDRPライブラリを用いることで、ユーザーのアプリケーションで利用できるようになる。現在は、カメラ画像処理用と画像認識用などのライブラリを用意しているが、今後もさまざまなアプリケーションで活用できるようにDRPライブラリを順次追加する計画である。
RZ/A2Mは、DRPの搭載で画像処理性能が大幅に強化されたことに併せて、カメラを使ったアプリケーションに最適となるような機能強化が図られている。画像を用いるシステムに付きものの外付けDRAMを省略可能な大容量の4MBのRAMを搭載するとともに、スプライトエンジン対応表示コントローラーやひずみ補正エンジン「IMR」などを採用。モバイル機器で用いられているMIPIカメラインタフェースにも対応した。これらの他、イーサネットを2チャンネルサポートしてネットワーク機能を高め、暗号ハードウェアアクセラレータを搭載してセキュリティ機能も強化している。これらの機能により、安心、安全にネットワーク接続が可能になり、家電から産業機器まで幅広いシステムの画像認識機能に最適とする。
なお、RZ/A2MのDRPは積和演算アレイを持たないため、ニューラルネットワークによる推論実行はCPUを用いる必要がある。ルネサスは、今後もDRPによるe-AIの進化を計画しており、2019年後半にはDRPによる推論実行にも対応して、AI処理性能をさらに10倍に高める計画。そして2021年には、DRPを新世代のAIアクセラレータとして進化させ、さらに10倍の性能向上を図る考えだ。この、RZ/A1比で1000倍のAI処理性能があれば、推論実行だけでなく学習も可能になるため、AIによる組み込み機器の付加価値向上に寄与できるとしている※)。
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