GEヘルスケアの日野工場がルネサスの「e-AI」を採用、不良品発生を65%削減:スマートファクトリー
ルネサス エレクトロニクスは、GEヘルスケア・ジャパンと共同で、製造機械向け「AIユニットソリューション」を用いた実証実験を実施したと発表した。GEヘルスケア・ジャパンの日野工場では、適用工程における不良品の発生を最大約65%削減するなど大幅な生産性向上が可能なことを確認できたという。
ルネサス エレクトロニクスは2018年9月4日、GEヘルスケア・ジャパンと共同で、製造機械向け「AIユニットソリューション」を用いた実証実験を実施したと発表した。GEヘルスケア・ジャパンの日野工場(東京都日野市)では、適用工程における不良品の発生を最大約65%削減するなど大幅な生産性向上が可能なことを確認できたという。
GEヘルスケア・ジャパンの日野工場は1982年の立ち上げから、CTやMR、超音波診断装置などの医療機器を製造してきた。GE(General Electric)が、2025年までに世界約450カ所の工場に適用しようとしているスマート化施策「Brilliant Factory」を進める上で、先行的に取り組みを進める7つのショーケースサイトの1つにも選ばれている※)。
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日野工場では、2017年8月〜2018年6月にかけて、製造機械にルネサスのAIユニットを取り付け、異常検知による不具合の早期発見や、不良品の低減効果に対する実証実験を行った。具体的には、AIユニットの試作機に学習済みモデルを組み込んで製造機械に取り付け、製造機械から出力される波形データを、極めて細かく計測することにより、従来は見えなかった加工の状態を把握できるようになった。IoT(モノのインターネット)の枠組みでエンドポイントとなる製造機械側で正常/異常を判断し、異常検知の結果のみを送信するため、通信データ量を増やす必要もなかったという。異常な波形を検知した際には、リアルタイムにアラームを出して、製造を一時停止できるようにした。これらの結果、不良品の発生を最大約65%削減できたとしている。
GEヘルスケア・ジャパンは、今回の実証実験において、異常を検知したら即座に製造を停止させることで不良品の発生を削減できる見込みを得たため、今後はAIユニットを量産用の製造機械に適用していく予定である。また、日野工場では従来、GEデジタルがグローバルに提供する産業向けIoTプラットフォーム「Predix」を導入しており、今回の実証実験では、Predixに判定結果をアップロードして、機械の状態をクラウド側でもリアルタイムに共有できることを確認している。今後、ルネサスのe-AIソリューションとPredixとの連携をさらに強化し、製造機械の長時間トレンドを分析するなど、さらなる生産性の向上に向けて協業していく方針だ。
GEヘルスケア・ジャパン 日野工場 工場長の藤本康三郎氏は「工場で製造する医療機器は高価なものも多く、不良品の低減は常に大きな改善テーマの1つ。その中でも、今回実験を行った製品では、これまで現場作業者の勘や経験などに頼って不良トラブルを検知していたが、ルネサスのAIユニットソリューションを適用した実験では、人に頼らない工程が実現でき、不良削減の効果の可能性が立証されたことに大変満足しており、今後も継続して取り組んでいきたい。たゆまぬ生産性の向上を通して、品質、納期、価格などの観点から、お客さまへより良い価値を提供できるように努めていく」と述べている。
ルネサスは「AIユニットソリューション」をグローバル展開へ
ルネサスは、組み込み機器向けAI(人工知能)ソリューション「e-AI」の展開を強化している。e-AIの第1弾となる製造機械向けAIユニットソリューションは、既存の設備や機械にAIユニットという後付け型の装置を取り付けて、異常検知や予知保全を実現するソリューションとなる※)。
※)関連記事:スマート工場最大の障害とは、後付けできるノンプログラミング組み込みAIで解決
学習済みニューラルネットワークモデル(学習済みモデル)を1日程度の短期間で適用することが可能であり、センサーデータの収集から加工、分析、評価/判定までの一連のAI処理を、リアルタイムに処理することができる。これにより、従来見えなかった微細な異常や不良を、現場で瞬時に判定できるため、無駄を削減できるだけでなく、製品品質の向上などユーザーに対する付加価値向上に貢献できる。
これまでルネサスは、自社の半導体工場でAIユニットソリューションの実証実験を実施してきた。GEヘルスケア・ジャパンの日野工場における実証実験の結果により、AIユニットソリューションの他社の製造工場における有効性を確認したことになる。ルネサスは、今回の実証実験を契機にAIユニットソリューションをグローバルに展開していく。また、既設の製造機械に後付けするタイプだけでなく、製造機械にあらかじめ組み込むタイプのe-AIソリューションの提案も予定している。
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