コンピュータビジョンにかけるインテル、コストとワット当たりの性能で勝負:組み込み開発 インタビュー(2/2 ページ)
2018年に入ってからは、AIの中でも映像や画像を取り扱うコンピュータビジョンに絞った取り組みを加速させているインテル。インテル米国本社のIoT事業本部でバイスプレジデント ビジョン・マーケット・チャネル事業部長を務めるジョナサン・バロン氏に話を聞いた。
インテル自身でIoTプラットフォームは手掛けない
MONOist 最近のAI関連デバイスでは、専用のASICを採用するトレンドがあります。グーグル(Google)の「TPU」や「Edge TPU」はその代表例でしょう。インテルとしてはどう見ていますか。
バロン氏 現在はAI市場が立ち上がるところであり、さまざまな目的に合わせたAIのアクセラレータが進化する段階にある。機械学習、ディープラーニング、エッジコンピューティング、コンピュータビジョンなど、用途に応じて適したものを使うことになるだろう。当社が2015年に、FPGAを手掛けるAlteraを買収したのは、PC以外でのコンピューティング需要を重視したからだ。Nervana SystemsやMovidiusもそう。用途に応じて最適なデバイスを選ぶことをヘテロジニアスコンピューティングと呼んでいるが、そういった需要は高まりつつある。
MONOist インテルにとってAIやIoT関連で競合となる企業にArmがあります。Armにはどのように対抗していますか。
バロン氏 Armと競合するのは、現場の機器で用いられるエッジAIの分野になるだろう。エッジAIでは消費電力の低減が求められるが、やはり性能も求められる。そういった観点で、Armからインテルに置き換わる場合もある。2016年から、アーキテクチュラルコンバージョンプログラムという施策を進めており、これはユーザーの環境をインテルアーキテクチャベースに置き換えるものだ。この施策の3年間の累計では、Armアーキテクチャからインテルアーキテクチャへの置き換えは、顧客価値で15億米ドルに上る。
この成果からいえるのは、低消費電力だけではダメだということだ。重ねて言うが、コスト当たり、ワット当たりの性能こそが重要だ。
MONOist 多くの企業がIoTプラットフォームを手掛けようとしています。インテルはIoTプラットフォームに対してどのように考えていますか。
バロン氏 インテル自身でIoTプラットフォームを手掛けることはない。顧客のビジネスという考えで、ITベンダーが多数展開しているものはやらない。例えば、大手クラウドベンダーのエッジ関連ソリューションである「AWS Greengrass」や「Azure IoT Hub/Edge」などを用いた製品の実現に貢献することに注力している。
MONOist GE(General Electric)の経営危機で、米国の産業用IoT市場がトーンダウンしているという意見がありますが。
バロン氏 産業用IoT市場は、米国でも、グローバルでもチャンスは極めて大きい。成長率は他分野の平均の2倍という高さだ。1個の会社の影響でどうこうなるというものではなく、インテルとして今後も積極的に取り組む方針だ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- インテルが画像認識ソフト開発ツールを無償提供「IoTの“I”は“Eye”」
インテルは2018年6月28日、東京都内で「インテル インダストリアル IoT ソリューション DAY」を開催。「IoTの“I”は“Eye(目)”ではないかと思うほどに、画像認識技術がより重要になっている」(同社)とし、画像認識ソフトウェアの開発ツール「OpenVINOツールキット」を無償で提供するなどしている。 - なぜインテルはコンピュータビジョンに注力するのか、エッジへの分散処理が鍵に
インテルがAI技術の1つとして注目されている「コンピュータビジョン」への取り組みについて説明。2018年5月に発表した無償のコンピュータビジョン開発ソフトウェア「OpenVINOツールキット」は日本市場でも浸透しつつあるという。 - IoTから脱落した巨人インテルの蹉跌、かくもIoTビジネスは難しい
IoTの団体や規格/標準についての解説をお届けしてきた本連載も最終回。最後は、団体ではなくインテルという特定の企業のこの数年の動向を紹介しながら、IoTというビジネスを総括してみたい。 - 「IoT向け組み込みAIは1mW当たりや1ドル当たりの性能が重要だ」――クアルコム
クアルコムジャパンは、クアルコム(Qualcomm)のIoT(モノのインターネット)事業戦略について説明。「スマートフォンをはじめ世界に多数出荷されているモバイルの技術がIoTをけん引する。モバイル技術の開発に注力してきたクアルコムも大きく貢献できる」(同社)と強調した。 - インテルは「データカンパニー」になれるのか、5Gモデムの成功がカギに
インテルは「データに関わるところをエンドツーエンドでカバーする、データカンパニーになる」(インテル 社長の江田麻季子氏)。既に有力な地位を築き上げているクラウド/サーバ分野だけでなく、5G対応モデムICなどのネットワーク分野、IoTのフレームワークにおけるエッジコンピューティング分野を含めて製品開発を強化していく。 - インテルはAIで勝ち残れるのか、脳科学研究から生まれた「Crest」に賭ける
世界最大の半導体企業であるインテルだが、AIやディープラーニングに限ればその存在感は大きいとはいえない。同社は2017年3月にAI製品を開発するAIPGを発足させるなど、AI関連の取り組みを強化している。2017年3月に発足したAI製品事業部の副社長兼CTOを務めるアミール・コスロシャヒ氏に話を聞いた。