コンピュータビジョンにかけるインテル、コストとワット当たりの性能で勝負:組み込み開発 インタビュー(1/2 ページ)
2018年に入ってからは、AIの中でも映像や画像を取り扱うコンピュータビジョンに絞った取り組みを加速させているインテル。インテル米国本社のIoT事業本部でバイスプレジデント ビジョン・マーケット・チャネル事業部長を務めるジョナサン・バロン氏に話を聞いた。
デバイスカンパニーからデータカンパニーへの移行を目指しているインテル(Intel)。PC向け、サーバ向けプロセッサの市場での圧倒的強さは変わらないものの、IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)といった、製造業も関わる新技術への取り組みではNVIDIAやArmといった競合企業に対して優位とはいえない状況だ。
ただし、2018年に入ってからは、AIの中でも映像や画像を取り扱うコンピュータビジョンに絞った取り組みを加速させている。その代表的な製品となるのが、2018年5月に発表した無償のコンピュータビジョン開発ソフトウェア「OpenVINOツールキット」だろう※)。
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インテル米国本社のIoT事業本部でバイスプレジデント ビジョン・マーケット・チャネル事業部長を務めるジョナサン・バロン(Jonathan Ballon)氏に、コンピュータビジョン市場に対する期待や、OpenVINOツールキットの展開状況、NVIDIAやArmなど競合企業への対抗策などについて聞いた。
MONOist AI技術の進化の恩恵を最も受けているのはコンピュータビジョンです。市場は大きく拡大しています。
バロン氏 コンピュータビジョンの市場が急拡大していることは確かで、さまざまな調査でもそういった数字が出ている※)。AlphaGOが囲碁の世界チャンピオンに勝利したように、コンピュータビジョンも人間の眼を超えた能力を発揮しつつある。
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MONOist インテルがAI技術の中でも、特にコンピュータビジョンに注力するのはなぜですか。
バロン氏 やはりさまざまな産業に適用できるという意味でコンピュータビジョンの価値は高い。これまで当社は、スマートシティーにおける交通管理、パーキング管理などで5〜7年ほど取り組みを進めてきた。ここで培った知見をさらに他の分野に広げているところだ。例えば製造業の場合、検査や品質管理などに適用すれば欠陥製品を出さずに済む。工場などで用いるロボットの安全対応をナノ秒オーダーで対応することも可能だ。また、広範な意味での自動仕分けメカニズムも対象になる。倉庫の出荷仕分けなどだけではなく、オフィスの出退勤管理などもそうだ。
MONOist とはいえ、ここ最近のAI技術が進化する中で最も存在感が大きいのはNVIDIAです。コンピュータビジョンの開発でもNVIDIAのGPUや開発環境が有力な状況ですが、どう対抗しますか。
バロン氏 コンピュータビジョンを開発したり、得られたアルゴリズムを実装したりするデバイスとしてGPUは本当に最適なのだろうか。コストと消費電力の観点では疑問だ。コンピュータビジョンのユースケースはさまざまで、1種類のデバイスでは全てをカバーできない。AIやディープラーニングを活用する上では、異なるアーキテクチャやユースケースに柔軟に対応する必要がある。コスト当たり、ワット当たりの性能こそが重要な指標ではないか。当社がリリースしたOpenVINOツールキットは、そういった観点で有用だ。
MONOist 2018年5月にOpenVINOツールキットを発表しましたが、現在の展開状況はどうですか。
バロン氏 期待を超える成果が出ている。現時点で、2018年内に設定していた目標値を全て上回っている。リテール、ヘルスケア、スマートシティーなどの業界に採用されている。日本ではゲームとプリントイメージングが好調だ。コンピュータビジョンを活用する業界の多様化を感じる結果といえるのではないか。
MONOist OpenVINOツールキットは無償かつオープンソースのソフトウェアですが、この「無償かつオープンソース」という点の手応えについて教えてください。
バロン氏 今後も続ける施策であり、成功しているといえるだろう。無償かつオープンソースなのでコミュニティーがオーナーシップをとってさらに広がりが生まれている。OpenCLやOpenCVなどの標準技術を採用し、さまざまなニューラルネットワークのフレームワークにも対応しているので利便性も高い。
AI開発という観点で、NVIDIAの開発環境は確かに大学や研究機関の開発者に広く利用されていることは確かだ。しかし、より各業界の現場に近い技術者にとって使いやすいものかというと疑問だ。OpenVINOツールキットは、そういった技術者がコンピュータビジョンを扱いたいと思ったときに、そのプログラミング能力を強化するようなツールになっている。
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