「IoT向け組み込みAIは1mW当たりや1ドル当たりの性能が重要だ」――クアルコム:人工知能ニュース
クアルコムジャパンは、クアルコム(Qualcomm)のIoT(モノのインターネット)事業戦略について説明。「スマートフォンをはじめ世界に多数出荷されているモバイルの技術がIoTをけん引する。モバイル技術の開発に注力してきたクアルコムも大きく貢献できる」(同社)と強調した。
クアルコムジャパンは2017年12月15日、東京都内で会見を開き、クアルコム(Qualcomm)のIoT(モノのインターネット)事業戦略に付いて説明した。同社の技術開発部門に当たるQualcomm TechnologiesでプロダクトマネジメントとIoT担当のシニアバイスプレジデントを務めるラジ・タルーリ(Raji Talluri)氏は「スマートフォンをはじめ世界に多数出荷されているモバイルの技術がIoTをけん引する。モバイル技術の開発に注力してきたクアルコムも大きく貢献できる」と強調した。
タルーリ氏はモバイルの技術がIoTをけん引する理由として、既に大きな市場規模を有していることによる「スケール」、そのスケールを基に最新技術が常に投入される「技術開発の速さ」、そして持ち運べる小さなサイズにさまざまな技術を搭載しなければならない「高度な技術の結合」の3つを挙げる。
また、2020年から本格サービスが始まる5G通信が、モバイルだけでなくIoTも視野に入れていることにも言及。さらに、「ロボットやセキュリティカメラ、ドローンなどデバイスはよりインテリジェントになっている。このトレンドに対しても、モバイルの先進技術が役立つはずだ」(タルーリ氏)とする。
この“インテリジェント”を代表するのがAI(人工知能)だろう。クアルコムは2007年からAIに関する研究開発を開始しており、2016年にはモバイルを中心に広く採用されているSoC「Snapdragon」で利用可能な組み込みAI技術「NPE(Neural Processing Engine)」のSDK(ソフトウェア評価キット)を投入している。2017年にはAI関連企業であるBrain Corpに出資し、機械学習企業であるScyferを買収した。
タルーリ氏は「AIに基づくインテリジェンスは当初クラウドにあったが、今やエッジ側であるデバイスに移行しつつある。インテリジェンスを持つデバイスによるエッジコンピューティングとストレージとしてのクラウドを組み合わせたハイブリッド型の方が、リアルタイム性やコストの面でメリットが大きい」と説明する。
インテリジェンスを持つデバイスが検討されている代表的な分野としては、自動運転車に向けて進化を続ける自動車、スマートスピーカーの登場が大きな刺激を生み出しているスマートホームとスマート家電、予防保全などが現場で期待される産業用IoTがある。これらのインテリジェンスを持つデバイスに最適な技術となるのが、モバイル向けSoCを構成するさまざまな機能ブロックを組み合わせて活用する「ヘテロジニアスコンピューティング」である。タルーリ氏は「画像認識以外のさまざまなタイプのインテリジェンスが求められるIoTにはヘテロジニアスコンピューティングが最適だ」と述べ、ソニーの新型の家庭向けロボット「aibo」にSnapdragonが採用されていることを強調した。
また組み込みAIとしてのNPEの強みについては「NPEは、消費電力、性能、サイズ、コストといったさまざまな項目を満足させられる総合力が最大の特徴だ。また、当社が注力してきたモバイルの技術は電池で動作できることが前提になっている。これはIoTにも求められることだ。IoTで用いる組み込みAIやニューラルネットワークを評価する際には、1mW当たりや1米ドル当たりといった性能指標が重要になってくるのではないか」(タルーリ氏)としている。
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