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パナソニックがトイレに採用したオゾン水、汚れを抑えるメカニズムとは研究開発の最前線(2/2 ページ)

パナソニック アプライアンス社は、同社が開発したオゾン水生成技術について説明。2018年4月に発表した全自動トイレ「アラウーノ」の最新モデルに採用しており、今後も水回りを中心に適用製品を広げていく考えだ。

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耐性菌を生まないオゾン水

大阪府立大学大学院の向本雅郁氏
大阪府立大学大学院の向本雅郁氏

 会見では、オゾンウオーターデバイスで生成したオゾン水により、水廻りの生活環境での汚れを落とす効果についてパナソニックと共同研究を行っている大阪府立大学大学院 生命科学研究科 教授の向本雅郁氏が登壇。水廻りを中心とした汚れの原因が細菌やカビであり、オゾン水がこれらの細菌やカビを不活性化する効果について説明した。

 水廻りの汚れのうち、水垢は人体などから出るマグネシウムやカルシウムが酸化析出したものだが、黒ずみやピンク汚れは細菌やカビの増殖が原因となっている。またヌメリは、細菌から分泌される「バイオフィルム」というものであり、抗菌物質や殺菌剤などを作用させにくくする効果がある。

 向本氏は「オゾン水のオゾンは、細菌の細胞内部に侵入して核酸のRNAやDNAを破壊する。抗菌物質や殺菌剤の場合、それらに耐える耐性菌の発生があり得るが、オゾン水は耐性菌を作らないことも大きな特徴だ」と説明する。

汚れの原因は水垢を除いてほとんどが細菌やカビの増殖ヌメリであるバイオフィルムが汚れを固着化する 汚れの原因は水垢を除いてほとんどが細菌やカビの増殖だ(左)。ヌメリであるバイオフィルムが汚れを固着化する(右)(クリックで拡大) 出典:パナソニック

 今回の共同研究では、汚れの原因になるさまざまな細菌やカビ、酵母を対象に、オゾンウオーターデバイスで生成したオゾン水による不活化効果を検証した。その結果、ほとんどの細菌やカビ、酵母で、菌を99.9%以上削減することができたという。

オゾン水による細菌やカビ、酵母の不活化効果の検証方法
オゾン水による細菌やカビ、酵母の不活化効果の検証方法(クリックで拡大) 出典:パナソニック
検証に用いた細菌検証に用いたカビ、酵母 検証に用いた細菌(左)とカビ、酵母(右)(クリックで拡大) 出典:パナソニック
細菌のオゾン水による不活性効果カビ、酵母のオゾン水による不活性効果 オゾン水による不活性効果。細菌(左)とカビ、酵母(右)(クリックで拡大) 出典:パナソニック

 また、汚れがつく材質による効果の違いも検証。毎分1lの流水を用いた場合、樹脂やガラス、金属などは10〜20秒で菌を99.9%以上削減できた。木や布のように材質の内部に菌が入り込む場合でも、40秒程度時間をかければ効果が得られた。

 この他、強い抗酸化作用を持つメチロバクテリウムについても、濃度0.55ppmのオゾン水であれば、水道法上限の濃度1ppmの塩素水よりも高い不活性効果を確認できた。数日間連続で汚染が続く場合では、濃度0.5ppmの毎日オゾン水で洗うことにより汚れの原因となる酵母の増殖を抑えられることも分かった。「オゾン水は、汚れのもとになるほとんどの細菌やカビに対して不活性効果を有している。水廻りを毎日オゾン水で流すなどすれば、細菌やカビが増殖しない、つまり汚れが抑制できるということだ」(向本氏)。

「アラウーノ」の新製品におけるオゾン水の散布イメージ
「アラウーノ」の新製品におけるオゾン水の散布イメージ 出典:パナソニック

 アラウーノの新製品では、オゾンウオーターデバイスから生成した濃度約1ppmのオゾン水を洗浄ノズルや便器に約1分間散布することで、便器内の汚れのもとになる菌などの増殖を抑制している。

 ただし、オゾン水にも課題がある。まず。数十分程度でオゾンが水と酸素に分解するのでためておけないことだ。そして、洗浄する際に大きな有機物があると高い酸化力が有機物の分解に使われ、細菌やカビを分解できないことだ。向本氏は「オゾン水の特徴は汚れの防止に効果的なところにある。不活性効果が高いことは確かだが、除菌や殺菌という用途で他と比べて特に有効なわけではない」と述べている。

 なお、オゾン水の安全性については、既に安全であるという報告が存在しており、パナソニックも実験で確認している。皮膚についた場合は、角質層で守られるので影響はない。もし飲んでしまった場合でも、体内の有機物と反応してオゾンは分解し、反応後に生成されるのも酸素なので毒性はないという。

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