脱臭と消臭の違いとは、パナソニックの「ニオフ」は“消臭”のオンリーワン:医療技術ニュース
パナソニックは、エコソリューションズ社のグループ会社であるパナソニック エコソリューションズ化研の消臭技術を用いたニオイケア製品について説明。2016年7月から商品展開を始めたプロユース消臭剤「nioff(ニオフ)」は、「国内消臭剤市場の中でもオンリーワンのポジションにある」(同社)という。
パナソニックは2018年2月27日、東京都内で会見を開き、同社 エコソリューションズ社のグループ会社であるパナソニック エコソリューションズ化研(以下、エコソリューションズ化研)の消臭技術を用いたニオイケア製品について説明した。
エコソリューションズ化研は1962年に創業した後、1963年に旧松下電工の傘下に入り、塗料を中心に“材料の機能化設計”を強みとしてきた化学企業だ。2016年度の売上高構成の73%を無機塗料や防さび塗料などが占める。そこで、もう1つの柱として期待をかけているのが、売上高構成で10%の消臭剤だ。同社は1985年から、空気清浄機の消臭フィルター用いられる「脱臭技術」と、消臭剤に用いられる「消臭技術」の両方を製品に展開しており「20年以上にわたり“ニオイケア技術”を磨き上げてきた」(エコソリューションズ化研 開発・渉外グループ グル―プ長の永安孝弘氏)という。
「脱臭」は広い空間をじっくりと、「消臭」は局所をすぐに
会見では、これらのニオイケア技術のうち消臭技術を活用して2015年に開発し、2016年7月から商品展開を始めたプロユース消臭剤「nioff(ニオフ)」について紹介した。
ニオイケア技術には先述した通り脱臭技術と消臭技術がある。脱臭とは、臭気を物理的作用などで除去または緩和することで、活性炭の細孔へのニオイ物質の吸着効果を利用することが多い。一方の消臭は、臭気を化学的作用などで除去または緩和することで、ニオイ物質と消臭成分を化学反応させて臭いのない物質に変える。
脱臭は、消臭効果を発揮するのに数十分〜1時間ほど掛かるものの、さまざまなニオイ分子に対応し、空間全体の臭いを低減することができる。パナソニック製品であれば、空気清浄機やエアコンの空気清浄機能が該当する。消臭はこの逆で、数秒〜数分で効果を発揮するものの、対応するニオイ分子は限定的で、空間ではなく局所の臭いの低減に最適だという。
プロユース消臭剤をうたうニオフは、医療/介護施設における便臭や尿臭の消臭に用いられている。排便時の便器内臭気の87%を占める硫化水素(H2S)を、亜鉛イオン分子と化学反応させて無臭にする「リコンビネーション消臭」が基礎技術となっている。さらに、顧客のニーズと利用シーンに応じて消臭剤の仕様を最適化しており、犬のトイレ回り向け消臭剤「nioff FRO DOG TOILET」では、便臭や尿臭に加えて、体臭も消臭できるように、体臭の原因となるノネナールと反応する無機塩を追加。人工肛門や人工膀胱を使用するオストメイト向けの消臭潤滑剤では、便臭の消臭を強化するためにイオンとして銅イオン分子を用いている。
永安氏は「ニオイ分子と化学反応するイオン分子を、沈殿や凝集などを起こさないよう溶液中で安定した状態にする配合技術に優位性があると考えている。実際に、ニオフによって得られる消臭効果は、国内消臭剤市場の中でもオンリーワンのポジションにあるのではないか」と胸を張る。利用者のアンケートでも、医療/介護現場のユーザー、一般ユーザーの両方の80%前後から「消臭効果を実感した」「再購入したい」という回答を得ている。
プロユース消臭剤の国内シェア10%を目指す
個人の住宅で用いられるファミリーユースニオイケアの国内市場が約600億円であるのに対し、医療/介護施設などで用いられるプロユースニオイケアの国内市場は約100億円だ。「数年後をめどに、国内プロユース市場のシェア10%の獲得を目指して事業を展開していきたい」(永安氏)。ただし、現在のニオフのラインアップにはnioff FRO DOG TOILETやオストメイト向けがあるため、個人向けの事業展開にも注力する。
また、パナソニックグループ内でのニオイケアの連携については「現時点では連携が不足しているのが実情。しかし、臭いを検知したらニオフを自動的に適量ドライミストして知らないうちにニオイケアしてくれる技術など、いろいろと模索している」(永安氏)という。
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