国土交通省、遠隔型自動運転車の基準緩和認定制度を施行:自動運転技術
国土交通省は、自動運転車の公道実証実験に必要となる道路運送車両法に基づく手続きなどを明確化するため「遠隔型自動運転システムを搭載した自動車の基準緩和認定制度」を公布、施行した。
国土交通省は2018年3月30日、自動運転車の公道実証実験に必要となる道路運送車両法に基づく手続きなどを明確化するため「遠隔型自動運転システムを搭載した自動車の基準緩和認定制度」を公布、施行した。
国土交通省は、安全確保を前提とした自動運転技術の開発・実用化を促進するため、車両内の運転者による操作を必要としない自動運転システムの公道実証実験を可能とする措置を2017年2月に実施した。これはステアリングやアクセル、ブレーキペダルなどを備えない車両について、速度制限や走行ルートの限定など安全確保措置を講じていることを条件に、道路運送車両の保安基準を緩和することを可能とするものだ。
これにより、2017年12月以降、自動車から遠隔に存在する運転者が電気通信技術を利用して監視し、必要に応じその運転操作を行う「遠隔型自動運転システム」による公道実証実験が開始されている。
ただ、こうしたシステムを搭載した自動車は、運転者が遠隔に存在する運転者席で、必要な監視・運転操作等を行うことから、車内の運転者席に運転者が存在することを前提とした現行の保安基準への適合性を一律に判断することが困難となる。
そこで今回、遠隔型自動運転システムによる公道実証実験が円滑に行われる環境を整備する制度を創設。国土交通省は「遠隔型自動運転システムを搭載した自動車の基準緩和認定要領」を制定し、同制度の施行に併せて基準緩和認定に関する基本的な考え方や手続きの流れ等を公表した。
届け出は地方運輸局へ
同制度の対象となるのは自動運転の開発を目的とした実証実験用自動車で、遠隔型自動運転システムを搭載したものとなる。基準緩和の認定の申請は、基準緩和の認定を受けようとする自動車の使用者(法人の場合は代表者)が行う。申請者は、基準緩和認定申請書に順守事項の誓約書や実証実験の概要説明書、遠隔型自動運転システムの概要説明書などの資料を添付し、同基準緩和の認定にかかわる自動車の使用の本拠を管轄する地方運輸局長に提出する。
遠隔自動運転システムによる実証実験を行う場合は、自動車の前面および後面の道路運送車両法施行規則第54条の規定による標識に近接した見やすい位置に、一定の大きさの文字を用いて、遠隔型自動運転システムによる運行を行っていることを表示する必要がある。
また、基準緩和の認定を受けた自動車が、道路運送車両法に照らして適切な運行が行われていないと認められた場合や、付された条件もしくは制限に違反して運行した場合または基準緩和の認定の申請に当たって虚偽の申請を行った場合、地方運輸局長は申請者に対し同法第100条第2項に基づく検査および関係者への質問を実施し、事実関係を確認したときは、基準緩和の認定の取消処分を行う。
ドライバーが運転席に座るクルマと同様に操作できることが条件
国土交通省では、遠隔型自動運転システムを搭載した自動車の基準緩和認定に関する基本的な考え方の中で、遠隔型自動運転システムを搭載した自動車に関する基準緩和の認定を行うための条件となる代替の安全確保措置について以下のように掲げている。
運転操作に必要な情報の伝達時に発生するタイムラグに関する安全確保措置ついては空走距離(※1)と制動距離(※2)を合わせた距離が、周囲の交通環境などに照らし合わせて安全なものであることとする。また、通信の途絶などにより運転者が車両の速やかな制御を行うことができない場合は、車両は緊急停止されることと規定している。
(※1)車両前方などの視界の映像が撮影されてから遠隔運転者席のディスプレイ上に表示されるまでの時間および遠隔運転者席における制動装置の操作装置を操作してから車両における制動装置が作動するまでの時間に実験時の速度を乗じた値
(※2)当該速度から制動装置を作動させた際に車両が停止するまでの距離
操縦装置に関しては、遠隔運転者席の各操作装置が、保安基準に適合する車両内の運転者席と同様の操作が可能であることを要件とする。
遠隔運転者席でもメータークラスタ内の警告灯が確認できることや、各操作装置の識別表示について、基準適合車両内の運転者席と同様に容易に識別されるものになっていることも求められる。操作は、各操作装置を容易に識別できるよう十分に経験を積んだ運転者が行うことと定めている。
視界に関する要件では、基準適合車両内の運転者席の直接・間接視界と同様の視界を遠隔運転者席のディスプレイ上に映像として表示することとしている。もしくは、基準適合車両内の運転者席と同様の視界のうち、遠隔運転者席のディスプレイ上に映像として表示されていない部分に障害物が存在する状況とならない措置をとり、かつそれ以外の視界をディスプレイ上に映像として表示することを要求している。
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