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CPUやGPUと違うデンソーの新プロセッサ、運転中のとっさの判断を半導体で実現ET2017 基調講演レポート(2/2 ページ)

「Embedded Technology 2017」「IoT Technology 2017」の基調講演に、デンソー 技術開発センター 専務役員の加藤良文氏が登壇。「AI・IoTを活用したクルマの先進安全技術」をテーマに、同社が取り組む高度運転支援システム(ADAS)や自動運転技術の開発について紹介した。

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CPUでもGPUでもないプロセッサを独自開発

 従来はクルマの運転に必要な知覚や認知、判断、操作は人間が行っていたが、予防安全や運転支援により、この一部を電子制御が代行するようになっている。例えば、システムがドライバーに要請した時のみ手動運転となるレベル3の自動運転では、知覚や認知、判断、操作まで全て電子制御化しなければならない。

 そのため、超高性能マイコンが必要になるという。「人間の知覚、認知、判断、操作を代行し、高度処理ができる、ざっと見積もって数千倍の計算能力があるプロセッサが求められる」(加藤氏)。フリースペースの認識や障害物の動きの予測で、人間と同等の認知処理を実現できるかが大きな開発テーマとなる。

 また、緊急時にどちらに回避した方がリスクが小さいか判断するような場面では、複数の条件を同時に処理して最適解を瞬時に決断するという、人間の反射動作のような処理が必要となる見通しだ。

 デンソーでは自動運転システムが担う「判断」に向けて、複数の処理を柔軟に組み立てて並列動作が可能な「DFP(Dataflow Processor)」の開発を半導体ベンダーとともに進めている。複雑な処理が得意だが直列処理で時間のかかるCPUや、並列大量処理を得意とするものの複雑処理が苦手なGPUとは特性が異なる「新領域プロセッサ」だ。

 DFPは自動運転システムの「判断」向けの演算能力が優れている他、消費電力が少ないなどのメリットがある。前方で停車したバスを避ける新しい進路を探索する場合、GPUであれば歩道なども含めて周囲全体の計算を行う。DFPは不要な経路の計算をストップすることで、処理内容に合せることで効率的な計算ができ、システムの発熱を減らすことも可能だ。自動車では限られた電源の利用と冷却が要求されるため、「AIを上手に使うにはこのようなテクノロジーも必要となる」(加藤氏)。

運転データを活用しやすい粒度に

 IoTの応用については、モビリティ社会の進化に伴ってますます必要性が高まっている。モビリティの需要と供給の高度なマッチングと予約や決済がサイバー空間で行われるようになることが予想される。モビリティの需要は人々の移動だけでなく物流にも広がり、供給は自動車にとどまらず、鉄道や航空、船舶なども含まれる。取引の記録を蓄積、分析し、サービス向上に利用していくことも想定される。

 こうしたコネクテッドサービスの実現には、機能やシステムを業界をまたいで統合することが不可欠となる。デンソーでは運転の挙動のデータを活用しやすい粒度と形式に変換する方式を採用する。これにより大規模な運転データを検索、比較しやすくなる。また、データ量は不可逆な形で約90%削減でき、さまざまなアプリへの適用も可能となる。IoT技術の活用でクルマが便利になる一方で、ハッキングの対象としても狙われている。自動車業界の活動として、セキュリティ対策技術の開発と標準化が急務になっている。

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