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安川電機は「アイキューブ メカトロニクス」で何を実現し、何を実現しないのか製造業×IoT キーマンインタビュー(4/4 ページ)

IoT活用によるスマートファクトリーが大きな注目を見せる中、安川電機は2017年10月に一連の取り組みを再編成した「アイキューブ メカトロニクス」を発表した。全世界的に製造現場のスマート化が進む中で、安川電機が目指すものとは何なのだろうか。同社執行役員 CTOで技術部長の善家充彦氏に話を聞いた。

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安川電機が今後、目指すもの

MONOist 現在のスマートファクトリー化などの動きを踏まえて、安川電機が目指す理想の工場の姿というのはどういうものでしょうか。

善家氏 1つのベースにあるのは「無駄がない」ということだ。現状で自動化しているといっても、本当にさまざまなデータを吸い上げてみると、さまざまな場面で無駄が発生していることが分かってくる。従来はデータを取得する方法や分析する方法がなかったから見えなかったというだけだ。新しい情報粒度の中で、新たなレベルでの「無駄取り」をするというのは最低限やらなければならないことだと考えている。

 さらに、より広い範囲での情報連携を行い、最適化していくということも必要だ。個々の工程だけでなく、セル全体の最適化や工場全体の最適化などである。例えば、安川版インダストリー4.0の実証工場として埼玉県入間市の工場で準備を進めている次世代生産工場「ソリューションファクトリー」(※)の例がある。もともとこの工場ではサーボモーターを生産していたが歩留まりがあまりよくない工程があった。そのため、歩留まりが悪いことを前提にして修正工程をあらかじめ組み込んだ工程を組んでしまっていた。しかし、歩留まりを上げる方策が見つかれば修正工程はなくすことができる。こうした全体最適を考えた工程全体を改めるような修正は、個々の工程を見るだけでは難しい。統合された情報の分析などで導き出して初めてできることだ。

(※)関連記事:“安川版インダストリー4.0”を実証へ、埼玉県入間市に新工場を建設

 こういう例があらゆる工場、あらゆる工程で存在する。まずはこうした領域をつぶしていき、さらに効率よく柔軟な生産環境を作るということが重要だと考えている。

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安川電機がSCF2015で示した安川版インダストリー4.0のデモ

MONOist 学習などの分析結果を自動でフィードバックして自動制御に落とし込む考え方などもあると思いますが、その点はどう考えますか。

善家氏 「ソリューションファクトリー」で検討しているが現実的にはかなり難しい。理想論としては、マシンが最高効率・最高品質で動くようにAIなどが自己判断するということが理想だと考えるが、それを実現するためにはまず個々のマシンやさらに個々の部品などで小さいサイクルを実現していかなければならない。現在のAI技術は何を学習するかという点など人が介在しなければならない領域が数多く残されており、完全な自己学習による自動制御というのは、しばらく先だと考えている。

 逆にいうと、個々のロボット製品などにはAI技術を積極的に搭載していく。ロボットの作業については自己解決できる仕組みを作っていきたい。特にロボットのハンド形状やティーチングなどが負担だとする声は非常に多い。ビジュアルフィードバックにより自己学習を行いピッキングなどの品質を上げていく仕組みなどを、できる限り組み込んでいく。ロボットほどAI技術を活用できる製品はないと考えている。

MONOist センサー技術やAI技術についてはどう考えていますか。

善家氏 センサー技術については、特に重視している。協業先を増やすという方向性と、自社内での開発を強化するという方向性の両面での強化を進める。人間と同じでAIを頭脳だとするとセンサーは五感である。その中でも生産領域では「見る」と「触る」が重要だ。基本的にはAIやビッグデータ解析技術などが出そろってきて「何でもクラウドに送って分析すればよい」という意見もあるが、ダメなデータはいくら分析してもダメな結果しか導き出さない。そういう意味では何をデータとして取得するかというセンシング技術が従来以上に重要になっているといえる。

 一方、AIについても協業なども含めて、強化していく。2017年10月にはAIベンチャーのクロスコンパスとの提携も発表。その他も協業をさらに広げ、安川電機としてのアプリを増やしていきたい。安川電機としての開発も強化する。AIについては学習のプラットフォームやフレームワークについては協業を進めるが、学習やモデル生成については基本的には安川電機内で行う方針だ。人材の確保が大変だが、外部との協業の他、教育なども強化していく。今後はIoTやAI、ソフトウェアなどの開発体制については100人規模まで拡大していく計画だ。

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