製造プロセス改革の最後のフロンティア、アフターサービス業務とIoTの親和性:製造マネジメント インタビュー(2/2 ページ)
製造業の業務プロセス改革などが進む中で、最後のフロンティアとして残されていると見られているのがアフターサービス業務の効率化である。アフターサービスパーツの管理ソリューションを展開するシンクロンのCEO アンダース・グルーデン氏に市場動向や日本の製造業の傾向について話を聞いた。
IoTで盛り上がるアフターサービス管理
MONOist IoTによるサービス化などに大きな注目が集まり、アフターサービス領域へのテコ入れも進んでいるような気がします。IoTの影響度についてどう考えますか。
グルーデン氏 IoTとアフターサービスパーツ管理の領域は大きな関係がある。IoTの進展はアフターサービス市場を活性化する大きな理由の1つだ。今は間違いなく移行期だと感じている。例えば、従来のアフターサービス領域での基本的な業務は「壊れたら直す」というものだった。納入されている機械が壊れたら、技術者に部品を持たせて訪問させ修理させる。その中で、持って行った部品が間違っていたら、再訪する必要が生まれる。しかし、IoT活用が進めば、こうした動きは変わってくる。
常に情報を把握し、壊れた部品などが特定できることで、サービスマンが1度の訪問で確実に修理できるようになる。また、壊れることを事前に予測する予防保全や予兆保全なども実現できる。さらに将来的には稼働時間をサービスとして提供するというような「サービタイゼーション(サービス化)」のような動きも出てくるだろう。こうしたアフターサービスを中心とした新たなビジネスモデルが見えてきたことは、アフターサービス市場を活性化する大きな原動力となっている。こうした取り組みを支援していく。
MONOist アフターサービスパーツの管理と、サービタイゼーションの間にはまだ大きな隔たりがあるように感じますが、どう考えていますか。
グルーデン氏 現在はサービタイゼーションへの移行期の入り口にいるというのが大前提である。この動きは始まったばかりで本格的な移行はこれからという状況である。またシステムやソリューションについても、必要なものが出そろっているとはいえない状況だ。
現状では、予防保全や予兆保全をシステムとして進めていくためには大前提としてアフターサービスパーツの管理が必要になる。故障の可能性と合わせて、修理部品の手配などが必須となるからだ。システムとしての連携も必要になるだろう。その中でシンクロンも機能強化を進めていかなければならないと考えている。当面は2018年から2019年ごろに「Syncron Uptime(シンクロンアップタイム)」をリリースする予定だ。
シンクロンアップタイムは、IoT基盤とつながり機器の稼働状況を把握して故障状況の可視化や予測を実現するもの。シンクロンの他のシステムと連携することで故障部品対応などが可能となる。計画保全が実現でき、トータルでの保守コスト削減に貢献する。IoTプラットフォームとの協業も進めており、米国のGEやIBM、AWS、ドイツのシーメンスなど主要なIoTプラットフォーム企業とは提携を進めている。
アフターサービス領域に特化する強さ
MONOist IoTプラットフォームなどと協業するとして、シンクロンの差別化についてはどのように考えますか。
グルーデン氏 IoTプラットフォームはERP(Enterprise Resources Planning)システムなどと同様で、アフターサービスの領域から見ると、1つの情報源である。現在もでシンクロンのサービスはERPと連携することが可能で、IoTプラットフォームでも同様のことが可能だと考えている。
その中で、重要になるのが、われわれがアフターサービス領域に特化した専門ベンダーであるということだ。在庫管理、注文管理、価格の決定管理、稼働時間管理などアフターサービス領域のさまざまなアプリケーションをスイートとして提供できる。そういう企業は世界でもほとんどない。さらにクラウド対応で先行したことも特徴である。グローバル化が進む中で、アフターサービスのクラウドへのニーズも高まっており、そういう意味でも強みを発揮できている。
MONOist 日本の製造業のアフターサービス領域での展開についてどう見ているか。
グルーデン氏 日本の製造業はグローバルでも強いポジションにあり、製品開発能力については高い評価を既に受けている。製品の質をぎりぎりまで高めていくというのはまさに日本企業の強みだ。その点では世界的なブランド力がある。しかし、製品を出した後というのは同じような価値を提供できているのだろうか。
個人的にはアフターサービス領域についてはまだまだ改善の余地があると考えている。日本の製品の良さは群をぬいているが、販売した後に何ができるかという点については、日本企業はリーダーではない。これは日本企業にとっての問題ではなくて、進歩できる余地だと捉えるべきだ。質の高い製品を売った後にどうするかを考えることが、ビジネス的にも大きな価値を生むことになるだろう。
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