食品大手企業グループが食の安全に向けてブロックチェーンを導入:製造マネジメントニュース
IBMは、食品サプライチェーンの大手企業から構成されるグループと共同で、大規模なブロックチェーンのコラボレーションに取り組むと発表した。
IBMは2017年8月22日、食品サプライチェーンの大手企業から構成されるグループと共同で、大規模なブロックチェーンのコラボレーションに取り組むと発表した。食品企業グループにはDole、Driscoll's、Golden State Foods、Kroger、McCormick and Company、Nestle、Tyson Foods、Walmartなどの大手各社が参加している。またIBMは、企業向けの新しいブロックチェーンプラットフォームも発表した。
分散型ネットワークであるブロックチェーンは、全ての取引に対して信頼性の高い環境を確立することができる。IBMでは、食品の安全性に影響を及ぼす重大な問題の多くが、情報とトレーサビリティーのアクセス不足により拡大されるとし、ブロックチェーン技術はこうした課題に対応するのに適しているとする。
ブロックチェーンの活用により、世界規模の食品サプライチェーンの場合、農家、サプライヤー、加工業者、流通業者、小売業者、規制当局、消費者と参加者全てが、食品の原産地や状態について、信頼できる情報へのアクセス権を得られる。例えば、食品の提供者が、ブロックチェーン・ネットワークを利用して汚染された製品を追跡し、短時間で発生源を突き止め、店頭から除去するといった対応が可能になる。
今回の連携に参加する各社は協力して、ブロックチェーンが食品のサプライチェーンに利益をもたらす新しい分野を特定して優先順位を付け、IBMの新しいソリューションに向けて情報提供していく。
同時にIBMでは、企業向けの本格的なブロックチェーン・プラットフォームとコンサルティングサービスを発表。IBMクラウド経由で利用可能で、同社が金融サービスやサプライチェーンなど複数の業界でブロックチェーン・ネットワークを構築したことで得た洞察を取り込んでいる。Hyperledger Fabric v1.0フレームワークおよびHyperledger Composerブロックチェーンツールなど、オープンソースのHyperledgerコミュニティーで開発されたイノベーションも含まれている。
同プラットフォームにより、複数の参加者がブロックチェーン・ネットワークを共同で開発したり、運用できるようになる。さらに同プラットフォームでは、アイデアをアプリケーション・コードへマッピングするのに役立つフレームワーク「Hyperledger Composer」を商用版として初めて提供。これにより開発者は、標準のビジネス言語をJavaScriptで作成できる。他に、無償のオープンソースコード、文書、APIなどを備えたブロックチェーン向けのIBM Developer Journeysも利用できる。
また、全参加メンバーに一定レベルのコントロールを提供し、1人のメンバーによる排他的なコントロールを回避する。参加者のオンボーディング、ロールの割り当て、迅速なアクセス管理により、企業はブロックチェーンによる取引を開始できる。
同プラットフォームの基盤は、実行中にダウンタイムなしでネットワークをアップデートできる。IBMクラウドで実行することで、マルウェアや内部関係者の資格情報の不正使用から保護され、ハードウェア暗号鍵も保護される。暗号鍵に対しては、商用で最高レベルFIPS140-2レベル4の耐タンパー性を提供する。
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