マルヤナギが“シンの”トヨタ生産方式で維持する高い品質と鮮度管理のヒミツ:鈴村道場(7)(1/4 ページ)
トヨタ生産方式の達人・鈴村尚久氏による連載コラム「鈴村道場」。前回に引き続き、“シンの”トヨタ生産方式の実践事例を紹介する。創業から66年の歴史を重ねる、マルヤナギ小倉屋では、約10年間で定着させた“シンの”トヨタ生産方式により、高い品質と鮮度管理を維持しているという。
前回は日本一の生協であるコープさっぽろの高い品質と鮮度管理を食品製造業の事例として紹介しました。今回は、より消費期限が長く、一定期間保存がきく食品を製造する一般食品製造業における“シンの”トヨタ生産方式の実践事例として、マルヤナギ小倉屋の取り組みを紹介します。
1.導入の背景
マルヤナギ小倉屋(以下、マルヤナギ)は、兵庫県神戸市を中心に全国へ、昆布佃煮・各種昆布製品・煮豆・蒸し豆・蒸し雑穀などを製造販売する老舗食品製造業です。江戸時代に淡路島のびんつけ油商から独立して昆布屋をはじめた小倉屋グループから1951年にのれん分けで創業したマルヤナギは、2017年で66年目を迎えます。
兵庫県を中心に国内5工場、札幌から福岡まで全国9カ所の営業所で事業を推進しています。「おいしい蒸し豆」をはじめとして「昆布佃煮」や総菜についてはご存じの方も多いのではないでしょうか。
マルヤナギは、社長の柳本一郎氏や副社長の柳本勇治氏が手ずから育てた優秀な工場長がほとんどの現場を切り盛りすることで、事業を堅調に伸ばしていきました。2001年に大門工場、2004年に大門第二工場(いずれも兵庫県加東市)を建設し、大きく事業を伸ばす戦略に出ました。もともとの工場は50人規模でしたが、大門工場は1工場当たり100人規模となり、2工場で200人となりました。
ここまで規模が大きくなると、優秀とはいえ工場長1人で生産計画の立案から現場への指示、仕入先、顧客の調整の全てを行うには限界でした。今までのやり方を変えなければならないという経営者の意識が最高潮に達した時、私(筆者)に経営指導の依頼が来ました。私は当時かなりの仕事量で最初はお断りをしましたが、大学の後輩であり懇意にしている副社長からの「どうしても指導していただきたい」という熱意に押され引き受けることにしました。
今から考えればそれぐらいの経営者の覚悟があったからこそ、徹底的にムダが排除されつつも活気がある、現在のマルヤナギの現場を維持できているのだと思います。
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