イノベーションを邪魔するのはPDCA思考、能率協会が訴える社会起点の重要性:製造マネジメントニュース
日本能率協会は、75周年を迎え経営革新への提言を発表する講演会を開催。「KAIKA経営の実践に向けて」をテーマに同協会が推進する「KAIKA経営」の価値を訴えた。
日本能率協会(JMA)は2017年4月17日、同協会の設立75周年を記念し、経営革新提言発表会「KAIKA経営の実践」を開催。同協会が推進する「KAIKA経営」の価値について訴えた。
変化に対応する経営
同協会が推進する「KAIKA」とは、「開花」と「開化」の2つの意味を持つ造語で、「個の成長・組織の活性化・組織の社会性を同時に実現していくプロセスを指す考え方」だとしている。価値が多様化し、企業の経済的成長を基盤とした成長が限界に達し、さまざまなひずみが生まれる中、あらためて社会価値をベースに、個人や組織が最適な活動を自律的に行うことを目指す活動である。
JMA会長の中村正巳氏は「“VUCA(変動性、不確実性、複雑性、曖昧性)”の時代に入ったといわれる中、決まった取り組みで一定の成長を続けるような時代は終わった。変化を先取りしながら進化していくというのが次世代経営の在り方だ。そのためには、個人の成長、経営の活性化、組織の社交性が不可欠だ」と述べた。こうした取り組みを実行するために生み出されたのが「KAIKA経営の基本モデル」である。
「KAIKA経営の基本モデル」では「個人の成長」「組織の活性化」「社会との関係」の3つを切り口とし、自律的な個が連携し、社会とつながっていることを実感しながら多様性を取り込み進化を続ける組織を目指す。中村氏は「イノベーションを起こすためには変化の兆候を察知し、うねりを作り出していくような取り組みが必要になる。そういう組織を作り出していく」と述べる。
同協会では、こうした取り組みを普及促進するためにKAIKA経営を実現する企業を表彰する「KAIKAアワード」を展開。講演内でも7社の事例を紹介したが、こうした「KAIKA企業」の中には、4つの共通点があるという。
- 活動の目的が「社会起点の発想」である
- 頻繁に目的を問い直す機会、目的を意識するマネジメントや仕組みがある
- 外部との接点を持つことが奨励されている
- マネジメントの前提として「人の力を信じる、引き出す、伸ばす」という思想がある
JMAが送るKAIKAに向けた3つの提言
そして、これらの4つの共通点を実現するために、JMAでは3つの提言を行った。
- 経営者は「長い時間軸」と「高い視座」を持って自社が取り組む社会課題を設定しよう
- 組織のリーダーは「脱PDCA」の思考と「青臭い議論」によって全体最適を追求しよう
- 組織の一人一人は「個」の思考と行動によってKAIKAを推進するエンジンになろう
中村氏は、特に「マネジメントにおいてPDCAは重要な手段になるが、イノベーションを考えた場合、PDCAはブレーキになる。イノベーションは誰もやったことがない新しい取り組みだからだ。リーダーは時に状況によっては、任せてあげるという姿勢も重要になる」とリーダー層の姿勢について強調した。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- インダストリー4.0は、日系製造業にピンチとチャンスをもたらしている
日本能率協会コンサルティングは、インダストリー4.0およびIoTによる技術革新に対する製造業の関心についてアンケート調査を実施。その調査結果を発表した。 - 「アメーバ経営」とは何か
グローバル競争の激化により多くの日系製造業が苦しむ中、にわかに注目を浴びているのが「アメーバ経営」だ。京セラをグローバル企業に押し上げ、会社更生法適用となったJALを復活させた原動力は何だったのか。本連載では、「アメーバ経営とは何か」を解説するとともに、その効果を示す事例としてJAL整備工場での変化について紹介する。第1回となる今回は「アメーバ経営」そのものを紹介する。 - 異例の大売れ工具「ネジザウルス」、社員30人の中小企業がヒットを連発する理由
自社のコア技術やアイデアを活用したイノベーションで、事業刷新や新商品開発などの新たな活路を切り開いた中小製造業を紹介する本連載。今回は年間1万丁売れれば大ヒットといわれる工具業界で、累計250万丁を売り上げた大ヒット商品「ネジザウルス」を開発した工具メーカーのエンジニアの取り組みを紹介する。 - 全員参加の生産保全、TPMとは何か?
本連載「いまさら聞けないTPM」では、TPMとは何か、そして実際に成果を得るためにどういうことに取り組めばいいかという点を解説していく。第1回となる今回は、まず「TPMとは何か」について紹介する。 - 革新的原価低減に必要な“ものの見方と考え方”〔前編〕
モノづくりの経営改善手法であるIE(Industrial Engineering)の実践的な方法についてご紹介する「実践! IE」シリーズですが、今回は「磐石モノづくりの革新的原価低減手法」をテーマに、革新的な原価低減を推進していくための考え方や手法について解説していきます。第1回はまずこの取り組みに必要な“ものの見方と考え方”について紹介します。 - 制約条件に着目した業績改善手法、TOCとは?
モノづくり企業が継続的に利益を創出することを“ゴール”に定め、具体的な方法論を提供するTOC(制約条件の理論)について、初学者向けに基本的な思想、用語、理論などをコンパクトに解説する。