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革新的原価低減に必要な“ものの見方と考え方”〔前編〕実践! IE:磐石モノづくりの革新的原価低減手法(1)(1/4 ページ)

モノづくりの経営改善手法であるIE(Industrial Engineering)の実践的な方法についてご紹介する「実践! IE」シリーズですが、今回は「磐石モノづくりの革新的原価低減手法」をテーマに、革新的な原価低減を推進していくための考え方や手法について解説していきます。第1回はまずこの取り組みに必要な“ものの見方と考え方”について紹介します。

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原価低減

 これまで「実践! IE」シリーズとして「方法改善の技術」や「現場視点の品質管理」など、実践的な手法について紹介してきましたが、今回の連載テーマは「磐石モノづくりの革新的原価低減手法」です。革新的な原価低減を推進していくための考え方や手法について、要点のみに絞り込んで分かりやすく解説していきます。

 多くの製造業の経営者や技術職の方々とお会いしていると「原価低減を継続的に進めていかなければならないと思っているが、どのように進めていいのか分からない」と悩んでいる人が次第に多くなってきているように感じています。日本の製造業に携わる人たちは長年、最良なモノづくりの方法について研究してきたはずなのですが「その技術がうまく伝承されていないのでは」との懸念を感じているのは私だけでしょうか。

 確かに考え方や感性といった極めて属人的な側面もないわけではありませんが、「生産の3条件(Quality, Cost, Delivery)」のうち、特に「原価(C)、Cost」の革新技術については蓄積していかなければならないものです。

 そのような憂いから、ワンランク上のモノづくりをめざした原価低減手法の手引き書として、この「磐石モノづくりの革新的原価低減手法」の連載をお役立ていただきたいと思います。本稿は、主として製造業を中心とした記述となっていますが、高い水準の「生産の3条件」の達成は「良いモノを、安く、早く、作る」という管理技術ですので、あらゆる業種に有効であることはいうまでもありません。


「革新」こそが経済発展の原動力

 オーストリアの経済学者で20世紀前半に活躍し「企業者の行う不断のイノベーション(革新)が経済を変動させる」という理論を構築したヨーゼフ・シュンペーター(Joseph Alois Schumpeter)は、「革新」こそが経済発展の原動力であると説いています。こうした力を持つ“経営革新”というと、普通の中小企業には縁のない困難なものという印象がありますが、それは大企業などの特別な企業だけが取り組む活動ではありません。

 革新には新製品・新技術の開発のような大きな取り組みもありますが、日々の企業活動の中で積み重ねられる作業工程の見直しなどの小さな活動も立派な“経営革新”だといえます。つまり、たゆまぬ努力を積み重ねていく努力が重要であり、その集積の結果が“経営革新”として結実していくのだと思います。

 また、「生産の3条件」の中でも、原価低減に対する活動がおろそかになっている背景としては、顧客からの品質や納期に関する厳しい要求など外部環境に必死で対応していくことに多忙を極め、社内の山積した問題が徐々に先送りにされ、放置されたままになっている現実もあると思います。さらに、何をどのように取り組むべきかという課題整理の不備、課題の解決方法などに関する情報量の不足、課題に取り組みむための時間や人材の不足などの問題もあるのではないでしょうか。

 今回の連載は、そのような状況を踏まえ「磐石モノづくりの革新的原価低減手法」の方向付けや課題の解決方法について、要点をまとめるとともに、より実践的な解説を心掛けて記述したものです。

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