スマートファクトリーがいよいよ現実解へ、期待される「見える化」の先:MONOist 2017年展望(3/3 ページ)
ドイツのインダストリー4.0がきっかけとなり関心が高まった、IoTを活用したスマートファクトリー化への動きだが、2017年は現実的成果が期待される1年となりそうだ。既に多くの実証成果が発表されているが、2017年は、実導入ベースでの成功事例が生まれることが期待される。
「見える化」の先をどう実現するのか
さて、ここまでスマートファクトリーにおける組織連携や標準化など全体的な枠組みの話を進めてきたが、「工場の中」についても触れておきたい。
2014年が「インダストリー4.0/スマートファクトリーとは何なのか」ということに関心が集まった第1フェーズだとすると、2015〜2016年はRRIやIoT推進コンソーシアム、IVIなど協力の地盤が整い、実証の動きが加速した第2フェーズだったといえる。そして2017年からは個々の企業が取り組みを実際の事業に落とし込む3つ目のフェーズに入る。
IoT活用のポイントとなるのはサイバーフィジカルシステム(CPS)である。さらに「見える化(モニタリング)」「制御」「最適化」「自律化」の4つの段階で進んでいくとされている※)。
※)関連記事:マイケル・ポーターが語る、IoT時代に取り残される“人”の存在
サイバーフィジカルシステムは、現実世界の情報をサイバー空間に送り、最適に処理した情報を現実世界にフィードバックするという「サイクル」を意味する。スマートファクトリーの理想とされる「自律的に最適生産を行う工場」を実現するためには、このサイクルがさまざまな機器で行われ、これらが高度に連携することが求められている。
ただ、現状日本の製造現場で実装が進んでいるのはほとんどが「見える化」の段階までである。「見える化」だけを考えるのであれば、分析結果を現実世界にフィードバックする部分まで作らなくてもよい。また「改善活動」が定着している日本の製造現場にとって、得られる情報の閲覧性が高まるということは改善の道具が増えるということにもなり、現状のプロセスにも受け入れられやすい。
2017年もIoTを活用した「高度な見える化」の動きは本格的に進む見込みだ。中小製造業などに向けた低価格ソリューションなどにも期待が集まっている。
しかし、「サイバーからフィジカルに戻す」部分については、まだまだ技術的にもプロセス的にも費用対効果の面からも高いハードルが残ると見られている。既に実証はいくつか進んでいるが、この現実世界の製造現場にどういう形でフィードバックし、最適な効果を得られるようにするのかという点が今後の課題であるといえる。
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